第53話 マッピング仕事してよ!
レオルドの奮闘により魔物の数は激減していた。続々と現れていた魔物も、今では数える事が出来るくらいにまでなっている。
だがその反面、生き残っている魔物は強靭なものばかりで、レオルドも手を焼いていた。
「くそっ……ハイオークにレッドゴブリンか」
上位種である二体はレオルドを追い詰める。レオルドも魔力は健在だが、体力は底を尽きかけており精彩を欠いていた。
(くそ~~~! 大分減ってきたのに、残ったのが上位種ばっかりとか、ふざけんなよ! ただでさえこっちはへとへとだって言うのに! 魔法で一気になぎ払えればいいんだけど、探査に引っかかってる魔力が気になるんだよな~)
レオルドは魔物を相手にしながらも冷静に戦場を分析していた。
今も剣を振るう片手間に探査魔法で魔物の行方を追っている。レオルドが現在感知している魔力の数は数百は下らない。
動いてはいても、ゼアトに向かってはいないので放っておいてもいいのだが、不安な要素は潰しておきたい。
しかし、大規模な魔法を放てば大量の魔力を消費してしまう。多くの騎士達と共有しているとはいえ無茶な事は出来ない。
魔力はレオルドにとって生命線といっても過言ではないからだ。
「鬱陶しい!!!」
素早い動きでレオルドを翻弄していたレッドゴブリンにレオルドは苛立ちをぶつける。
ピョンピョン跳びはねるように動き回っていたレッドゴブリンの足元に小さな落とし穴を作って体勢が崩れた所を一気に攻める。
レッドゴブリンは素早い動きも特徴なのだが近接戦闘も得意としており、中々に厄介な魔物だ。
ただ、体勢が崩れた上にレオルドの身体強化を施した力任せな剣には勝てなかった。
レッドゴブリンに集中している所へハイオークは突撃してきた。手に持っている棍棒をレオルド目掛けて振り下ろす。
レッドゴブリンに集中していたレオルドはハイオークが振り下ろした棍棒に気が付かず、ハイオークの棍棒によって叩き潰される。
「ブオ?」
しかし、ハイオークは何の手応えも感じなかったので振り下ろした棍棒を持ち上げてみると、そこには何もなかった。
「気付いてないとでも思ったか。愚か者め!」
レオルドはハイオークの背後へと回っており、首を一閃する。ゴロゴロとハイオークの首が地面に転がるのを一瞥したレオルドは、振り返って虎視眈々とこちらを狙っている魔物に溜息を零す。
「はあ~~~。休む暇がないな」
愚痴を零しつつも、レオルドは自分を囲んでいた魔物へと仕掛ける。
剣で斬り伏せ、魔法で穿つ。シンプルであるが最も効率的な方法だ。
とは言っても敵の数はまだまだ多い。幸いなのは増える数が減ってきている事。このままのペースならば今日中に片が着くかもしれない。
しかし、そんなレオルドの淡い希望を打ち砕く事が起こる。
「ん? 魔力反応が減っている?」
探査魔法で感知していた魔力反応が一気に消滅した。怪訝に思うレオルドは周囲の魔物を一掃して探査魔法に集中する。
(さっきはなかった魔力反応があるな。馬鹿でかい……。あっ……また複数消えた。この馬鹿でかい魔力反応が原因か……敵か味方か)
不確定要素が生まれてしまった事を知ったレオルドは、一度ギルバートと合流しようかと考えた時、巨大な魔力反応はこちらへと猛スピードで近付いてきた。
「なにっ!?」
巨大な魔力反応の方へとレオルドは振り向くと、木をバキバキとへし折りながら、巨大な影が姿を現した。
レオルドはゆっくりと影を見上げると、そこにいたのは――
「バジリスクッ!?」
咄嗟に目を伏せたレオルドは脂汗がぶわっと流れ出す。
(嘘だろ、嘘だろ、嘘だろ!!! どうして、こんな所にバジリスクが!? いや、そんな事はどうでもいい。 今こいつと戦って勝てるかどうかだ……)
レオルドが焦っているのはバジリスクの戦闘力にである。
ジェネラルオーガでさえも簡単にあしらってしまう力を持ち、なおかつ牙には強力な毒を持っており、さらには目が合った者を石化させる魔眼を宿している。
ゲームではバジリスクはイベントに出てくる中ボスの役目を担っている。人々が石にされているという話を聞いたジークフリートが討伐に向かうイベントだ。
強さは先程述べたとおりで、今のレオルドには荷が重い。勝てる勝てないの話であれば勝てない。
だからこそレオルドは焦っている。ただでさえ疲弊しているのに、そこへバジリスクという強力な魔物が現れたのだ。レオルドでなくとも焦るに違いない。
(ここは一度後退して、ギルと合流するのが一番だが……バジリスクに背中を向けて逃げるのは厳しいか。だが、目を合わせれば石にされてしまうし……どうすればいいんだ!)
目を合わせないようにバジリスクを観察するレオルドはジリジリと後ろに下がる。
その時、バジリスクもモンスターパニックの影響を受けていたのだろう。レオルドを襲おうとしていた魔物を丸呑みにした。
食事に夢中になっているのを見たレオルドは、これを好機だと判断して駆け出す。
しかし、バジリスクは逃げ出したレオルドを追いかける。背後から近付いて来る気配にレオルドは肝を冷やすが、すぐに安心することになる。
「バジリスクとは珍しい。坊ちゃまには触れさせませんよ」
レオルドを飛び越えてギルバートはバジリスクに飛び蹴りを喰らわせる。
あまりの威力にギルバートの何倍も大きな体を持つバジリスクは、木を薙ぎ倒しながら吹き飛んでいく。
「む……」
対して、ギルバートは一撃で仕留める事が出来なかった事に声を漏らす。
「歳は取りたくないものですな」
やれやれといった感じでギルバートは肩を落とす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます