隠しコマンド

mayopuro

隠しコマンド

僕が学校でする会話といえば、やっぱりゲームの話だ。

最近は昔のゲームが流行っている。操作がシンプルで、その癖難しすぎる。でもなかなかクリアできないが故に、夢中になるのだ。


今日はとっておきの話を聞いた。

「あのステージどうやってクリアすんの?難し過ぎてさー・・」

「あーあれな・・・なんかさ、ズルみたいだから俺はやってないんだけど、おじいちゃんが無敵になれるコマンドがあるって・・」

「え!マジ!?教えて教えて!」

「うーん・・わかった。えっとね・・」



家に帰った僕は早速スイッチをいれた。

ワクワクが止まらない。

「えっとなんだっけ・・この画面で・・・」

ボタンを押す手が汗をかく。

1つ1つ、慎重に・・ボタンが『カチャ、カチャ』と僕の耳を刺激する。

「・・で最後に、Bと・・」

『ピロロロローン』

気持ちのいい音が脳まで響いた。

「やった!これで・・」



次の日の会話はこう。

「あのコマンドやってみたんだけど全然無敵になんねーじゃん!嘘だったのかよ!」

「本当かよ?・・まぁおじいちゃんももう120歳過ぎてるから、いい加減ボケてきてるのかも・・」

「120歳!?お前のじいちゃんすげーな!すげー長生き!」

「まあなー。でもなんかごめんな。嘘みたいになっちゃって・・」




大人になった私は、車に轢かれたり、高い所から落下したりして生計を立てている。

所謂『スタントマン』というやつだが、そんじょそこらのとはワケが違う。

スタントをやる度脳内に

『デデーン』

と残念な音が響くので、本当だったら死んでいるレベルの危険なスタントなのだ。

そう、あのコマンドは嘘じゃなかった。無敵になれるコマンドは、文字通り私を無敵にしたのだ。


そして今日は記念すべき100回目のスタント。

いつにも増して気合いが入る。

「スタンバイお願いしまーす」




『デデデデデデデーン』

聞いた事の無い気持ち悪い音が脳まで響いた。

確かに自機が100機もあれば、無敵と吹聴するのも仕方がない・・か・・・

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