青い皇帝たちへ

エリー.ファー

青い皇帝たちへ

 眺めは悪くない。

 しかし、居心地は悪い。

 この椅子がいけないのだ。

 ここに座らされて、多くの民を見下ろす。

 何の意味があるのか。

 何の価値があるというのか。

 理解ができない。

 この立場にいるというだけだ。

 けれど。

 批判的な態度でいることで得られる報酬は少ない。

 あくまで私たちはその生き方を選んでしまっただけである。

 皇帝だ。

 しかし、今日も青い顔。

 青い皇帝である。

 他の国々も同じなのだろうか。夢想する。日々。

 大きな争いもない代わりに、小さな利益もない。いつか、私がここから出ていく日が来るのだろう。

 その時。

 皆、私の顔を見てくれるのだろうか。

「話し相手が欲しいんだ」

 誰かに言った。

 返事はない。

 何もない。

「すまない。誰かいないか」

 返事はない。

 悲しくはない。

 それがまた悲しい。


 青い皇帝たちは、嘘をついている。

 悔しさが募るばかりである。

 事実を並べてはならない。

 嘘がばれてしまうから。


 青い皇帝はそこにいない。

 もう、斬首となった。

 あれは、処刑ではない。

 サックスの音が鳴り響く。

 歓喜ではない。

 悲劇である。


「青い皇帝に頼みがある」

「その頼みはきかない」

「まだ言っていない」

「いや、分かる。奴隷制度のことだな」

「分かっているならどうにかしてくれ」

「ならん」


 青い皇帝になるために、あらゆるものを犠牲にした。

 気が付けば国は転覆寸前。

 人々は死ぬ。

 避けることはできないだろう。


「絶対が足りない」

「どうか、助けてください」

「このままでは、民が死んでしまう」

「赤ん坊は泣くこともできません」


 青い皇帝よ。

 貴様はこの国のどこに立っている。

 誰の上に立ち、誰を見下している。

 いずれ、死ぬのだ。

 何を分かった気になっている。


 青い皇帝が死を感じている。

 さらばだ。

 最初から神になれぬことが決定していた人間たちよ。


「この町には絶望しかない」

「重要な要素なんてない」

「鼠たちを殺すべきだ」

「どうすれば清潔な街になるんだ」

「俺は何度も言っているんだ。鼠を全滅させればいい」

「鼠とはなんだ」

「青い皇帝のことだ」


「無理をするな」

「無理をしなければ何も見えない」

「教育すらまともに受けられない」

「この病に名をつけることばかりに必死になっている」


「勝利者インタビューの内容を考えながら試合に臨むレベルに達していない選手が多すぎる」


 青い皇帝たちは今日も寂しい思いをしている。

 いつか、やめてしまいたい。

 できれば、ここで断ち切りたい流れ。

 でも。

 手を汚したくはないのだ。

 皆で貧困に喘いでいたい。

 納得だ。

 権力に集まった金が放出されるという幻想。

 その中で無意味に名前を付ける。

 情報操作されている。

 これは事実だ。

 すべては、世の中に溢れている。

 注意深く見ることが試されている。


「青い皇帝たちを殺さねばならない」

「そのための武器が必要だ」

「手に取る必要はない」

「喋り続けるだけでいい」

「それが仕事なのか」

「あぁ、仕事だ」


 青い皇帝たちはいつか殺されるだろう。

 まともな人生を歩めるとは思えない。

 それに気が付いているのに、歩みを止めることができないのだ。

 不憫である。

 しかし。

 食い物になってもらう。


 大きな意志がある。



「そう思いたがるところに、浅はかさを感じる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青い皇帝たちへ エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ