インスタグ・ラブ。
湾田よーと
デート募集。
僕は陰キャなのでインスタを滅多に開かない。
とか言うとあらゆる方面の方々から罵声を浴びせられそうなので少し訂正しておくと、陰キャ故に僕は友達が少ない。……あれ待ってこの言い方も多方面に喧嘩を売ってそうな感じがするね。まぁそれはひとまず置いておいて。
高校入学当初に友人からのススメでインスタをダウンロードはしたはいいものの、クラスメイトと数人と交換した――だけで終わっているので、フォローとフォロワーの人数は少なくて、その数字も大体同じくらいであった。
要するに、身内しか繋がっていないってわけで、とりわけこうといったインスタを開く意味があんまりなかった。
まぁ鍵アカだからフォローされてもリクエストとして僕に通されて、そのリクエストは知ってる人じゃないと解除しないので僕が意図的に身内だけと――という節はあるけれども。
インスタを使っていてこういうのはなんだか味気ない奴みたく思われちゃうかもしれないけれども、僕はあんまり不特定多数と繋がりたいという意欲はない。
だからプロフィールも空白だし、アイコンもネットから拾ってきた無地の水色の壁紙を使用している。どうして水色かって言うと水色が好きだからである。
『ウチの高校名のイニシャル付ければ同じ高校の奴が勝手にフォローしてくるぜ』
と友人は丁寧に教えてくれたけれども、ふーん、と聞き流した。本当にフォロワーを増やしたいとかの願望は僕にはないんだ。
それならどうしてインスタのアカウントを作ったかと言うと、ただ友人のノリにアテられてダウンロードしたこのアプリを、自分のアカウントも作らずただ置いておくだけなのはどうかなぁと変な気分になっちゃっただけなんだ。
なので僕はインスタグラムを滅多には開かない。
そう、滅多には――。
「おい
帰りの電車内。友人が半ば興奮気味にスマホを眺めていて、僕は声抑えないとなのになぁと思いながらチラリと友人のスマホを覗き込む。
そして、僕は息を飲んだ。
「……かわ」
柄でもなく、僕はボソリと呟く。
彼が持つスマホの画面には二人の女子が写った写真が表示されている。カフェにいるのだろうか、可愛く飾り付けされたドリンクと店内の様子とが二人の隙間から覗き見られた。
その二人の女子。まぁどっちも可愛いんだけども、僕の目線は勝手に左側に写る彼女に向かってしまう。
大きな瞳とふっくりとした唇。それに煌びやかでサラサラとしたこがね色の髪。よくもまぁスマホの写真だって言うのにここまで綺麗に写れるものだ。最近のスマホの性能がいいのか、はたまた彼女の写真写りがいいのか、どっちとは言えないけれども、とにかもかくにも、彼女は写真だと言うのに、とてつもなく華があるように感じた。
「相変わらず可愛いよな、有田さん」
彼が横でそう呟くので、僕は静かに頷いた。
どうして写真一枚、そのたった一枚だけだというのに、ここまでも僕らを魅了するのか。本当に彼女はそこはかとない魔力を持っていそうだった。
そうやって食い入るように二人で画面を見つめる。電車のガタゴトと揺れる音でさえも、今の僕らはうるさいなんて思わないほどに。
そんなんだから、もっと音の小さなアナウンスには気付かなかった。
「んっ……んー!?」
ふと顔を上げると、僕らの最寄り駅に電車が到着してしまっていて、こともあろうことか、もう今既にドアが十分の八ほど閉まっている具合だった。
「航平、こーへい!」
僕は彼の肩をゆすって、彼を酔から醒させる。
彼はハッとなって、「えっ今どこ!?」と僕に投げかけるけれども、もうそんなことをしている合間に、電車は駅を抜けて、近くの踏切を渡っている最中だった。
「「しまった」」
僕らの後悔のため息が重なる。あぁ、本当にやってしまった。
まぁでも、有田さんの魅力がここまでに凄みがあるってことがお解り頂けたんじゃなかろうか。それを知ってもらえたなら――良くはないか。
結果として僕らはもう一駅分揺られることになった。残念ながら定期範囲外の駅なので、追加分の料金を払って下車することになった。
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