第41話 モケイテツ
国王夫妻とアンリ、リュシアンをモーリス商会研究開発室に案内したレティシア。
メンバーを紹介したあとは室内を案内することに。
公爵邸でのプレゼンは主に計画や波及効果に関するものが中心だったが、ここでは主に技術面に関してレティシアやリディーが説明を行なう。
設計図や数値データ、そして魔導モーターの試作品などを見せながらだ。
アンリは普段から来ることも多いので一歩引いて見ているだけだが、国王夫妻もリュシアンも興味津々で説明を聞き、時折質問などもしているのが関心の高さを示している。
「……僕が王都に行ってから、随分進んだんだね。凄いよ、レティは」
リュシアンが感心した様子でそう言う。
「私だけじゃここまで来れなかったよ。リディーの研究成果があったから、課題が一気に解決したんだ」
「そうか……リディーさん、ありがとうございます。どうか、レティの夢が実現できるよう助けてあげてください」
「いえ、私の方こそ……レティシアお嬢様と出会ってから……とても充実した日々を過ごさせてもらってます。今では、鉄道開発は私にとっても叶えたい夢になりました」
「みんなで一緒に頑張ろうね!」
そんな若者たちの会話を、ユリウスとカーシャ、アンリは微笑ましく、そして頼もしげに眺めるのだった。
「さあ、今回の目玉はこちらですよ!」
一通り室内を案内したあと、レティシアは得意げに言う。
彼女が最後に案内したのは、大きなテーブルが置いてあるところ。
一辺が数メートルはあるだろうか。
テーブルの上には大きな布が被されていて、そこに何があるのかはまだ分からない。
そして、レティシアが布を取り去ると……
「じゃじゃ〜んっ!!」
「おお……!これは……」
「まぁ……凄いわね」
「こんなものまで作ったんだ……」
そこに現れたものを見て、一同は驚きの声を上げた。
山や川、町並みを縮小した箱庭。
そこにはレールが敷かれて、小さな機関車とそれに連結された客車が数両乗っていた。
それはつまり、鉄道模型のレイアウトであった。
(前世で言うところのHOゲージくらいかな?本当はNくらいにしたかったけど、魔導モーターの大きさ的にこれくらいが限界だったんだよね)
国の上層部に向けては、実際に乗車ができる1/2スケールくらいを想定していたのだが、その前段として魔導モーターの実験も兼ねて製作したものである。
それだけならば、レイアウトとしてはレールだけあれば良かったのだが……レティシアと親方が凝り性を発揮した結果である。
その甲斐あってか、3人の反応は上々であった。
「なるほど、これならばイメージも湧きやすいな。……これは動くのか?」
「ええ、もちろんです!ここに操作パネルがあって、魔力を流せば動かせます。やってみますね」
そう言ってレティシアが操作パネルにあるツマミを回すと……
ウィーン……と音を立てながら、機関車が牽引する列車が動き出した!
「動いた!」
「おお……」
「これは面白いわね!」
実際に動くところを見て、更に興奮する3人である。
この模型の仕組みは、前世のものと殆ど同じだ。
つまり、電気の代わりに魔力をレールに流してモーターを回すのだ。
モーターだけでなく前照灯や室内灯まで点灯するあたり、芸が細かい。
機関車や客車のデザインは比較的シンプルなものだが、これもレティシアの前世の記憶を参考にしている。
「どうですか?中々楽しいでしょう。鉄道が普及すれば、何れはこういった模型なんかも趣味として広がるかも知れませんね」
「うむ……なぁ、レティシアよ。これと同じ物を作れぬか?」
「ええ……それは勿論可能ですけど……お時間はそれなりに頂きたいです」
「ああ。当然、対価も支払う。主だったものに鉄道のイメージを伝えるのに、これほど有用なものはないだろう」
「なるほど、それもそうですね……それでは直ぐに制作にかかって、完成したら王城までお届けいたします」
「頼んだ」
「……あなた、嬉しそうですね?」
「む?……ま、まぁな」
カーシャに指摘されて、バツが悪そうに答えるユリウス。
理解を示すように、ウンウンと頷く親方。
リュシアンも羨ましそうに見ている。
(これは……売れる!!)
実物の前に玩具として売り出しても良いかも……商魂逞しいレティシアはそう思うのであった。
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