第3話 お昼休みに、鈴木くん
お昼休みのときだった。
ピコン。
と、チャットアプリの着信音が鳴って、
「あっ」
思わず声が出ちゃった。だって、鈴木くんからだったから。
写メが添付されていた。朝のHR(ホームルーム)前、私が『ほしい』って言っちゃった写メ。
良かった、送ってくれて。
私は内心ほっとしていた。だって鈴木くん、午前中は、授業の後の休憩中、真面目か、って言いたくなるくらい、スマホをいじったり、見たりしないんだよ。いつもどおりの、おっとりしたモブ男子に戻ってたし。
(一時間目の授業後の私の気持ち)
『あれ? 鈴木くん、写メ送ってくれない? スマホ触んないし』
(二時間目の授業後の私の気持ち)
『あれ? スマホまた触んないじゃん。いつ送ってくれるんだろ?』
(三時間目の授業後の私の気持ち)
『ま、真面目か! ちょっとくらいスマホ触りなさいよッ! てか、いつ写メおくってくれるの!?』
(四時間目の授業後、お昼行くときの私の気持ち)
『むぅ~……、ふん、もう良いし。あんなに嬉しそうな顔して『良いよ』って言ってくれたのに……』
と、私は不満と不安のせいで、ちょっとご立腹だったから。
ピコン。
《鈴木です。一条さんの欲しいって言っていた写メを送ります。朝に言っていたのに、お昼休みになってすみません! それから、欲しいって言ってくれてすごく嬉しかったです。一条さんの、お気に入りの写メになってくれたら幸いです。m(_ _)m》
ふふっ、なにこの丁寧な感じ。やばっ、ウケる。鈴木くんぽいなぁ。
「な~に、ニヤ付いてんのよ、
「えっ!?」
学食で、一緒にお昼ご飯を食べていた
「ちょっと良いことあったみたいじゃん?」
「そんなわけないし」
「ふ〜ん? じゃあ何でスマホ隠したし」
「うっ……、そんなことしてないし」
「くくくっ」
玲奈が小さく笑う。あっ、なんかちょっとムカつくんですけど。
すると玲奈がぐいっと顔を寄せてきた。な、何よ。
「ねぇ、ねぇ、なんなのか教えてよ」
「だ、だ〜からぁ、何にもないし。華わかんなぁ〜い」
「あっ、出た腹黒悪魔系の華さん」
おい、小悪魔可愛い系だっての。
私が訂正しようとしたとき、
「玲奈センパイ〜!」
「うんにゃ? おー、どした可愛い後輩達よ」
私たちのそばに、玲奈の後輩がやってきた。女子バスケの子達だ。
「男子バスケ部が、また勝手に体育館の使用日時変えてるんですよ。文句言ってもスルーしてきて……」
「あちゃ〜、またそんなことしてくる?」
よっと、と言って、席を立つ玲奈。
「華、ごめんね。ちょっと先行くわ」
「ううん、良いって、いってらっしゃ〜い」
うへへ、助かったぁ。
「……、華、あんた助かったぁ、って顔に書いてるよ」
「何言ってるかわかんなぁ〜い」
「たく、絶対教えてもらうからね。んじゃ、また」
「はいは〜い」
玲奈が後輩達と一緒に学食から出て行く。
さて、私はどうしょうか。
スマホのチャットアプリをまた起動する。
鈴木くんのメッセージ。
「……、まあ返信でもしますか」
何て返そう。…………、あれ、意外と思い浮かばない。
「う〜ん……、あっ、そうだ」
直接会って言おう。だって、私、鈴木くんにだいぶ焦らされたからねっ。ちょっと、仕返ししないと。うん、それで良いかも。
私はそんな意地悪なことを思いながら、鈴木くんが送ってくれた写メを眺めていた。
「ふふっ、イルカ、かっわいい♡」
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