バイトの話

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第1話 バイトNo.1 ミスタードーナツ①

私の住んできた田舎の街にミスタードーナツができて高校生の私達の憧れでした。この頃流行ってたのが矢沢永吉が率いるキャロルがやってたロックンロール。


当時はバイトのお姉さんが膝上15センチくらいの超ミニのワンピースで高校生の私にはとても眩しい存在でした。


その後、大阪の某芸大で大学生になり、貧乏ながらもバイトと課題のための徹夜もこなしておりました。


その最初のバイトが、高校生の頃に憧れていたミスタードーナツ!


長野県出身の友人がケンタッキーフライドチキンで働き、私は先輩からの紹介でミスタードーナツへ。

なぜ食べ物屋にするかというと、バイトが終わったら時間を超えたものは捨てるので勿体無いからバイトが持って帰ってもいいから。

私がドーナツ、友人がチキン。あとは晩飯になりそうなバイトをする奴を探せば3食食べられる。



私は、課題をこなす為に、土日だけの勤務。夕方に正社員が帰宅してからは、私と相棒の2人で翌朝まで勤務。翌朝に正社員が来たらデータを引き継ぎして帰宅する。


夜中は深夜手当があり50円アップだったと思う。



当時はミスタードーナツ松原店には地元の暴走族「退夢魔神(たいむましん)」が根城にしており、上は18才から下は中学生で50名ほど毎週末には集会をしてました。月に一度は元メンバーで現在はケツモチの暴力団の組員もやってきて、なにやら右翼の集会のような感じで気勢を上げてました。



で、私と相棒はなぜ土日専門のバイトになったかと言うと、私が高校生の頃に空手道場で修行していたから。相棒は先日まで別の場所で暴走族の特攻隊長だった奴。


ここを紹介してくれたのは大学の先輩で少林寺拳法の高段者。


そうです。

暴走族対策のバイト君ですね。

たった50円だけ上乗せしただけの。

もし襲われたらレジを開けて金は取れるようにすること。下手に鍵をかけるとレジは壊されるのでそれよりもお金を盗られた方がマシ。


もし、事務所にも入られたら、窓から屋根に逃げて決して反抗しないように、と。



相棒と何度か練習して、レジをあけておき、なんでも取り放題にして、屋根の上に逃げる。


人数にもよるけど、敵側の人数が多ければ鉄パイプとか釘バットとかで暴れまわるから、下手にやり返したりしない方がいいと相棒から講義を受ける。



ま、いつもは普通の集会なら人数も二、三十人くらいなので、ヤンキーのにいちゃんとも仲良くなり、たまには 時間が過ぎて処分になるドーナツを配ったり、ミルクシェイクの掃除交換の時間には、「シェイク飲みたい人〜!」と言えばワシもワシもと、お前ら甘いもの好きやな〜と😁



暴走族の連中は夜中の1時くらいには帰宅するか、走りに行くので、夜中の常連さんだけが来る。



すぐ隣には河内松原駅があり、そこには少ないながらも飲み屋もある。飲み屋からはねたお水のお姉ちゃんがやって来る。ほぼ毎日。


綺麗だけど儚そうな美人さん。

父親にさんざん言われた「金と女と博打には手を出すな!」がなければもっと仲良くなったかもしれない。でも多分、父親の言う通り、幸せにはならなかっただろう。この美人さんに似合うだけの太っ腹で芯がしっかりした大人の男ではないから。私では荷が重い。



タクシーのオッチャンも良く来る。

天王寺や阿部野橋からこの辺りまで運んで、また帰る前にここで休憩するのだ。


コーヒーはお代わりしたければ、店員に言えば三杯くらいは何も言わずにコーヒーを淹れる。


慣れてくれば、なあ、にいちゃん、このドーナツそろそろ捨てる時間やろ?と、タダで寄越せと言う。


まだあかんわ。あと2時間やな。


2時間かー。その前には帰るで。


はい、おつかれさん。オッチャンまたあしたな〜。



【追加情報】2022/6/2

この当時、私が勤めていたミスタードーナツでいつも有線で掛かってたのが、竹内まりあ「不思議なピーチパイ」で、これでもか!と言うくらい何度も掛かってました。





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