壊れた携帯

第5話 スール

 さて、先ほどのような麻薬事件が起きた伊岳市とはどんな都市か?


 ここは本州のど真ん中にありながら、宇宙先進国『ニューガン皇国』が、そこには様々な文物が集っている。

 この都市は出来て三年しか経っていないのだが、既に高層ビルが立ち並ぶ大都市になっており、人口も十万人を超えている。

 それだけの人口があれば当然ながら学校も存在している。


 その学園の名前は伊岳学園。


 そこは日本人のみならず、宇宙人達も集まる人種のるつぼのような学園であった。

 そんな宇宙人達が通う学園なので、この学園は少々特殊である。

 何しろ宇宙先進国の学園なので、そこで行われる部活は宇宙にしかない部活である。

 バルドー部やクルマー部という名前だけでは全く予想もつかないようなスポーツや文化活動も多い。


 その中に『第二スーラー部』という物がある。


 スーラーと言われてそれが何なのかわかる人はまず居ないだろう。

 作者が勝手に考えた宇宙の言葉なので、それで何のことかわかるような人が居るなら、自慢するよりも病院に行った方が良い。

 それはともかくとして、退

 

 そして、第二スーラー部の面々は今日も今日とて、スールの腕を磨いていた。

 では、そのスールの様子を見て見よう。


 ごちゃごちゃと色んな資材が棚に並んでいる部室の真ん中にある大机にディスプレイ画面が置いてある。


 かちゃり……


 大きな画面に映し出されているのは侍のようなアバターのキャラで、刀を手に目の前の相手に構える。

 侍と対峙している敵は鬼のような外見をしており、筋骨隆々とした身体に頭に生えた大きな角、簡単な鎧を着ているが見るからに強そうな敵である。


 二体が対峙する様子を、仏頂面の少年が椅子に座ってディスプレイ画面で見ている。

 目の鋭い厳しそうな顔つきの少年で、髪は手入れしていないのかザンバラ髪で、頭の上から二本のアホ毛が出ている。

 少年が見ているディスプレイ画面の後ろでは 二人の男女が向かい合わせに座っている。

 端末を操作しているのは豚の耳をした少女は、アホ毛の少年と同じような画面を見ており、その向かいには映像兜マッカと呼ばれるフルフェイスヘルメットのような物を被った太った少年が、緊張した様子でコントローラーを握りしめている。


 ぱっと見はゲームしているように見えるのだが、実はこれがスールである。


 この世界でのハッキングはこんな感じで行われるのだ。

 それはそれとして、画面の中で対峙している侍と鬼が動いた!

 最初に動いたのは侍で、鬼に向かって剣を振るう!


 ビュバ!


 侍が振るった剣から三日月状のビームが鬼に向かって飛んでいく!

 すると鬼は頭を前に出すと……


 ビビビッ!


 頭の角から出たビームが鎌状のビームを相殺する!

 だが、侍の方はすっと距離を詰め、至近距離から剣を振るう!


 シャキン!


 だが、その剣をあっさりとジャンプで避け、そのまま距離を取る鬼。

 再び両者のにらみ合いが始まるのだが、その様子を見ていたブタ耳の少女がアホ毛の少年に尋ねる。


「どうかな? 東山は勝てそう?」

「あー……難しいかな? 操作の腕は同じぐらいっぽいな」


 頭のアホ毛を弄りながら答える少年。

 するとブタ耳の少女は言った。


「操作は同じぐらいなんでしょ?」

「操作はな。肝心の基礎能力がなぁ……」


 渋い顔で画面を見ている少年。

 すると……


 ガチャリ……


 部室のドアが突然開いた。



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