第3話 英雄現る!
『このクルムはもうスールした。大人しくしろ』
「なんだとぉ!」
画面に出てきた謎の黒いヒーローに、顔を青ざめさせる男だが、次の瞬間にはさらに青くした。
ゴガン!
「「「「なぁぁぁぁっ!」」」」
絶叫を上げながら、クルムに抱えられていた男たちが地面に叩きつけられた!
全長が10m近くあるロボットに叩きつけられて、そのまま倒れて動けなくなる男たち。
「確保!」
動けなくなった男たちを外で待機していた警官たちが手錠を掛けていく。
そして、クルムの方にも近寄っていくと……
ガコン
クルムのコックピットハッチが勝手に開き、なすすべもなく運転していた安室礼(37歳)が捕まってしまう。
その様子を建物の内側から見ていた男たちが呆然としていた。
「な、何が……」
呆気に取られる禿頭の男だが、そんな彼の耳に声が入った。
「スールして無効化した。お前達も大人しくしろ」
「誰だ!」
男たちが慌てて声の主を探すと、いつの間にか部屋に一人の男が居た。
身長は170ぐらいだろうか?
黒い虫を思わせる仮面を被っている男で、ヒーロー衣装に身を包んでいた。
その姿に見覚えがあった禿頭の男が顔を歪ませる。
「英雄か……」
「そうだ」
そっけなく答える仮面の男。
英雄……それは宇宙人が導入している制度で、何らかの形で特殊な能力を手に入れた人達である。
そう言った人達は政府や様々な企業や団体に属しており、陰に陽に社会に関わってきている。
禿頭の男には目の前の英雄の正体には検討が付いていた。
「その黒い仮面……『|漆翅(うるし)』か!」
「……なんかそんな風には言われているみたいだな。そんなカッコいいもんじゃないけど?」
黒い仮面の男は頭の触覚を少しだけ触って、そっけなく禿頭の男に答える。
『
どうも警察にかかわりが深いらしいのだが、それ以外はよくわかっていない英雄である。
そんな漆翅は静かに男たちに伝えた。
「大人し――」
「やっちまえ!」
「――くしろと言うだけ無駄か」
禿頭の男の号令でバディルの男たちは一斉に漆翅に銃を撃った!
ビュオオオオオオオン!
いくつものビームが漆翅へと殺到する!
それらのビームはまっすぐに進み……
ビュオオオオオオン!
そのまますり抜ける!
「なにぃ!」
禿げ頭の男は思わず叫んでしまう。
いきなり漆翅の姿が消えたのだ。
「どこ行った!」
そう言って男たちが辺りを見渡す。
「レーダーを使え! どっかにかくれているはずだ!」
『わかりました!』
禿頭の男の言葉にバディルを着こんでいる男は即座にレーダーで辺りを見渡す。
(くそ! どこ行った!)
バディルの中で必死にレーダーで室内外問わず探し始める男だが……
ビュン……
不意に目の前が真っ暗になる。
(な、何なんだ!)
慌てて動こうとするのだが、バディルが完全に動かなくなった。
ヴン……
兜の中の画面には先ほどの漆翅が現れた!
『このバディルはスールした。もう動かないから大人しくしろ』
漆翅を見て、忌々し気に彼は舌打ちした。
(ちい! スールされたか!)
スールとは言わばハッキングのようなもので、相手の端末を使えなくする攻撃方法である。
これにやられると、バディルという強化服もただの重い鎧に変わり、クルムのような乗り物も牢獄と化す。
(脱いで逃げるしかない!)
そう思って慌てて強化服を脱ぐ男。
だが……
「動くな。大人しくしろ」
何とか兜を脱いだ男の視界に飛び込んできたのは警察だった。
読者は既に忘れていると思うが、彼らは既に警察に包囲されていたのだ。
動けなくなれば、警察によってあっけなく捕まるのも道理である。
男が抱えていた禿頭の男も、抱えていたせいで身動きが取れなくなり、既に手錠を掛けられていた。
男は力なく項垂れて言った。
「自首します」
「意味有る訳無いだろ?」
警察のツッコミを聞きながら、娑婆の最後の空気をゆっくりと深呼吸する男であった。
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