第95話 アイデア急募
やあ、みんな。神崎お兄さんだよ。今日も錬金術でいろいろ作ろう! ……おい。何だその目は。しけたツラしてんじゃねぇぞ、ゴラァ。誰がくたびれたおっさんじゃ。いぶし銀と言え、いぶし銀と。
「ねぇ」
今何してんだ、だと? 説明してなかったっけ? あ、そう。じゃあ説明するけどしっかり聞いてくれよな。ウォッホン、つまりだね、俺の装備をどんなの作ろうか悩んでいるのだよ。
「ちょっと」
普通に作るのも考えたんだけどさ、それじゃつまらないよね? もっとこう、なんていうか、びっくりドッキリメカみたいなのを作りたいわけよ。……え? ネタが古い? お仕置きだべ~とか通じない? マジか。ショックだわ。
「聞いているの?」
「聞いてるよ。最近の若いやつはって話だろ?」
「意味が分からないわ」
「これだから最近の若いやつは……」
「何よ?」
「アイナは可愛いなぁ。よしよし」
危なかったぜ。もう少しで氷漬けにされるところだった。俺は冷凍保存された挙句、遠い未来に目覚めるとか嫌だぞ。今でも古いとか言われてんのに、そうなったら骨董品だよ。
「それで、あなたは何をしているのよ。装備を作るんじゃなかったの?」
「あー、そのつもりなんだが……いいアイデアがなくてな」
「アイデアって、普通の強い装備で十分じゃない」
「浪漫がないんだよなぁ」
「浪漫より性能よ」
なんと酷いことを言うんだ、アイナは。男から浪漫を取ったら何も残らないぞ。巨大ロボットも猫型ロボットも気合とドリルで何とでもなるロボットも生まれないんだ。つまり変形合体ロボは浪漫の塊なのだよ。
「理解不能ね」
「フッ、アイナはまだまだ子どもだな」
「あなたは大人になりなさいよ」
ぐぼぁ……。会心の一撃だぜよ。くっ……危なかった。致命傷で済んだ。当たり所が悪かったら死んでいた。
「さて、ふざけるのもこのくらいにしておこう」
「ふざけているのはあなたよ」
「いたって真面目だが? で、アイナ。強い防具ってどんなのを想像する?」
「強い防具? どんな攻撃も防ぐ防具かしらね」
いや、頓智じゃねぇから。強い武器はどんな敵も倒せる武器で、この二つをぶつけるとどうなる? とかいう話じゃないから。
俺はアイナにアイデアを聞くことを諦めて真面目に考える。スキルを山盛りにすることは大前提で、そのために最高の素材を使うのも当然。問題は俺のステータスだ。防御力を考えるなら金属製の鎧でガチガチに固める方が強いに決まっている。だが、当然だがその分重くなる。俺のステータスだと着ているだけで疲れるし、スキルで軽量化できるが、そのスキルを付けるより他の有用なスキルを付けたい。さらに言えば、俺の戦闘スタイルは某赤い彗星の人スタイルなので、機動力低下は非常に厳しい。
「金属繊維でも強度は出るが、全部金属製に劣るし……でも軽さを取るなら服系統の防具だよなぁ」
「地球の技術を再現できるのなら、少しは提案できるのだけれど」
「詳しくわかるならできるぞ。詳しくないと性能が落ちたりスキルの数が少なくなる」
「そうなの?」
そうだよ。いろいろ作ったのもの。遠隔でスクロールが起動できるとわかった日にファンネルを作ろうとして失敗した。適当な想像で浮かんだレシピは完成度が低くて宙に浮くことすらしなかったのだ。錬金術にどういう基準があるのかは知らないが、何でもできるけど、意外と制限が多いのが錬金術らしい。
「なら教えてあげるわ」
アイナは得意気だ。地球の常識が通用しないこの世界で、アイナが地球で覚えた知識が役に立つと聞いて嬉しいのだろう。俺は紙とペンを取り出してメモを取る姿勢になった。
えー、なになに? 防弾チョッキの構造だと? なんでそんなの知ってんだよ。多層構造で繊維自体も特殊な物が使われていて、しかも繊維の折り込まれ方が……はいはい。次は防刃ベスト? なんだそれ? へー、ふむふむ。爆発反応装甲? 何それ格好いい。あー、リアクティブアーマーね。某有名なロボットアニメでも出てきたぞ。現実にもあったのか。まだあるの? いや、聞くけどさ。
「ま、大体こんなところね」
「お、おう……」
なんて知識量だ。メモ用紙が1枚じゃたりなかったよ。でも、おかげて面白いアイデアが浮かんだ。装備を作るのが楽しみだ。
「役に立てたかしら?」
「ああ、とても役に立った。ありがとう」
「そう、ならよかったわ」
ニコニコしているアイナは可愛いなぁ。癒される。これから魔力を馬鹿みたいに使う苦行が待ち構えているのだもの。ただでさえ身体が痛いのに、頭まで痛くなるとか絶望しかない。俺は痛いのは大嫌いなのに、なんでこんなに痛い目に会ってるんだろうな?
「よし、錬金術を頑張りますかね」
「頑張って」
幼女に応援されたら頑張るしかないぜよ。で、アイナは見学ですかい? あ、そう。悪くないよ。気が済むまで見学すればいいさ。俺が頭痛に耐えながら平常運転しなくちゃならないだけだ。
俺は脳裏に浮かんだレシピ通りに素材を取り出して作業台の上に乗せた。
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