異世界ものを嗜む若おっさんがマジで異世界に行っちまう話(仮題)
気晴
第1章 陸の孤島でサバイバル
第1話 プロローグ
「あ~、疲れた」
もはや口癖のようになりつつある言葉を吐いて、俺はカシュッと缶ビールの蓋を開けた。ゴクゴクと金色の液体を飲み干し、近所のスーパーで買った半額シールの張られた総菜を口に放り込む。
「クソ上司が。報連相くらいしろよ」
俺はあの憎たらしい上司の顔を思い浮かべて、悪態をつく。それもそのはず、今日は土曜で、既に深夜なのだから。金曜の帰り際に、突然仕事を俺に押し付けてきやがった。期限は週明けの月曜とか、マジで嫌がらせだと思う。おかげで休日返上のサビ残する羽目になった。
「絶対にワザとだろ。クソッたれ」
入社当初から何かと俺に対して嫌がらせをしてきたが、ここ最近、かなりひどくなってきた。俺も育った環境のせいで、性格もねじ曲がっているし無愛想の自覚があるが、さらに上の上司の太鼓持ちしかできないあいつよりはマシだ。
「そんなんだから離婚すんだよ」
そう言えば同僚の神崎が「お前目つき悪すぎ。最初、睨んでるかと思った」とかほざいていたな。目つきが悪いことくらい知ってるわ。何年この顔で生きていると思っている。
あの上司の事を考えているなど時間の無駄なので、俺はPCの電源を入れる。パスワードを打ち込み、慣れた手つきでとあるサイトを開く。
「今日は更新してるかなっと。お、あるある」
ネット小説。その中でも異世界転生のジャンルに俺はハマっている。
現実世界で冴えない人間が、前世の知識とチートスキルを得て異世界で無双する。もし実際に出来たら最高に気持ちが良いだろうな、と思いながら読み進める。色々な転生パターンがあるが、どれになっても今の生活よりはマシだろう。
「あーあ、俺も転生してーわ」
そうだなぁ、チートスキルで無双して、前世の知識で内政して、ハーレム作って……夢が広がるな。
現実は安いビールと半額総菜で独り愚痴っているだけなんだよなぁ。悲しい。
本日更新分を読み終わり、仕事の疲れもあって、俺はチャチャッと寝支度を整えベッドに入る。
「起きたら転生してねーかな」
そんなバカなことを口走りながら、俺は瞼を閉じる。
まさか、あんなことになるとは、この時の俺は思いもしなかった。
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