第9話 ぴょんすること

 第3話でも触れましたが、女子寮は高い塀で囲まれています。隣接する学校スペース、工場スペースにも塀があり、ぶっちゃけ『逃げられない』ようになっています。

 なんか、私がこの仕事に就く以前は、鉄条網まであったらしい。

 人を何だと思ってんだか、とか言うとマジトーンなので、はい、皆さんご一緒に。

 「進撃かよぉー!!」

 まあ、曲がりなりにも年頃の子ばかりの女子寮です。

 門限あります。本科は22時まで、専科は24時だったと思います。

 結構自由じゃん、となめてはいけない。

 彼女らの勤務は1週間を単位に、早番、遅番を繰り返すので、遅番(14時から22時)の週は基本外出出来ないんですよ。

 午前中は学校ですし。

 でも、溢れる若さ、自由への渇望は止まりません。

 で、『ぴょん』と。

 塀を乗り越えることを『ぴょん』と言ってました。

 アグレッシブです。元気です。

 怪我だけはしないよう気を付けて欲しいです。

 あと、注意力ないので見つけられないとは思いますが、目の前には下りないでね。捕まえなくちゃいけないから。

 以上、無責任寮管からの提言でした。

 ああ、でもタクシーで塀の外に乗り付けてさぁ、財布を持ってくるって待たせてそのまま『ぴょん』、踏み倒そうとした馬鹿者は問題になっていました。

 担当寮じゃなかったので結論までは覚えていない。でも、クビにはなっていないと思う。卒業したし。

 おそらく『外出禁止』1か月くらいで済んだんじゃないかな。

 でもね。

 ここで考えて頂きたい。

 彼女らには『ぴょん』する体力と技術があります。

 私達大人にはない、それだけです。

 真面目に外出禁止なんか守っていたか?それはもう闇の中です。

 でもこの少しコミカルな『ぴょん』という隠語、大好物だったことは内緒でした。


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