死神

ペンシルヴェニア通り、連邦捜査局本部。




アメリカ国旗が並ぶ建物から出てくる捜査官の二人。



ネイサン 「先輩。知ってます?最近巷で噂の楽死屋ってやつ」


起きたままのボサボサ頭に、少しズレた眼鏡をかけたネイサンが噂話を始める。


髪をきつくポニーテールに縛り、目鼻立ちがハッキリとしたサラが深くため息をついた。



サラ 「ねえ。わざわざ外にコーヒーを買いに行くって言ってる女の気持ちがわからない?」









眼鏡を直し、微笑を返すネイサン


サラ 「もういいわ。で、何?」


ネイサン 「楽死屋ですよ。証拠とかは何もないんですけど、死を望む人達を安楽死させてるみ たいです」


サラ「どうやって?」


ネイサン 「だから証拠がないから分からないんですって。死神かよって感じですよね」


サラ 「薬か何かを使ってるんじゃないの?」


ネイサン 「それが司法解剖しても何も出てこないらしいんですよ」


サラは立ち止まる。











サラ 「私達は連邦捜査官よ。噂で盛り上がってる暇があるなら、仕事に戻りなさい」



ネイサンを置いて早歩きで歩き出すサラ



ネイサン 「先輩。知ってますよね。二年前の事件」



サラは立ち止まる



ネイサン 「当時最大勢力だったアド・ファミリーのボス、幹部らが外傷なく全員死んでいた事 件。あの時も死因は解明出来なかったんですよね?」










サラ 「ええ。知ってるわ」



ネイサン 「当時のボス、グレコ・アドは相当な慎重派で、ハッキングなどを恐れてビルにはコ ンピューターや監視カメラが一つもなかった為、証拠は何も残っていなかった。だから、死神の 仕業だってみんな口揃えて言ってましたよ」



サラ 「その事件がどうしたの」



ネイサン 「似てると思いませんか?この楽死屋の件と」










サラ 「証拠がないなら、捜査の仕様がないわ」





ネイサン 「先輩。心当たりあるんですよね?死神の」





サラ 「いい加減察してくれる?わざわざ外にコーヒーを買いに行くって言ってるの」












ネイサン 「すみません。ついオカルト好きが出過ぎました。僕戻ります」



本部に戻るネイサン。



サラは深く息を漏らす。



公園のベンチに座り、タバコに火をつけるサラ。












サラ 「先輩。どこにいるの」




空を見上げ、煙を目で追いながら、サラはタバコを深く吸う




4話に続く



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