タバコの火




アタッシュケースをトランクにしまうクロウ。 車のドアに寄りかかり、クロウはタバコに火をつける。

ボロボロの折りたたみ式の携帯電話が鳴る。


クロウ 「俺だ」


リンコ 「終わったかしら?」


クロウ 「もうじき終わる。終わったら金は届ける」

リンコ 「もう一件依頼よ。金はそれが片付いてからでいいわ」







クロウ 「俺は構わないが、仕事はあいつ次第だ」


リンコ 「ふっ。あのガキはやるよ。なんせ強力な呪いがかかってるからね」


クロウ 「あいつの力が呪いだってのか?いつからオカルト好きになったんだ?」


リンコ 「力が呪いならまだ良かったかもね。もっと強力な呪いだよ。救えない呪いだ」


クロウ 「ならお前も相当呪われてると思うぜ」


リンコ 「あたしは呪う隙も与えないわよ」








クロウ 「そうだな」


リンコ 「あら、猟犬クロウも随分と牙を抜かれたのね」



クロウ 「もう切るぞ。美味いタバコが台無しだ」



リンコ 「それと、あんた達を嗅ぎ回ってる奴らがいるらしい。噛まれないように気をつけるの ね。猟犬ちゃん」








電話が切れると、グリムが屋敷から出てきた。


グリム 「、、、、終わった」


目も合わせずに車に乗りこむグリム。


クロウは何も言わず、タバコの火を消し運転席にのりこむ。

エンジンをつけると、エルヴィスの曲の続きが流れる車内。


グリム 「曲、止めてくれ」

クロウは黙って曲を止める。


クロウ 「この仕事、続けるのか?」








グリムはドアの上の取手をぎゅっと握りしめる。


グリム 「、、、、わからない」


クロウ 「やめてもいいんだぞ」


グリム 「誰かの役に立てるなら、、、、それでいい」



クロウ 「そうか」








窓を開けてタバコに火をつけるクロウ。


グリム 「それ、美味いのか?」


クロウはタバコを深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐く


クロウ 「わからん。いつの間にか、これがないと生きていけない身体になってた」


グリム 「40過ぎればわかるのか?」


クロウ 「そうかもな」









無音の車内でタバコを吸いながら、バックミラーをチラッと確認するクロウ。





後ろにフォードの黒いマスタングが見えた。





3話に続く









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る