それ

長万部 三郎太

言う通りに

放任主義だった父とは対象的に、幼少期の頃より母の過干渉に苛まれてきた。

習い事や学校のクラブ、友達選びまでもが “母の言う通り” だ。


わたしは『それ』が当たり前で当然のことだと思っていたうえ、思春期を迎えたある日の出来事がきっかけでその思いが加速した。


難関校への合格発表当日。


母の言う通りに塾へ通い、

母の言う通りに勉学に勤め、

母の言う通りに遊び時間を削り、

母の言う通りに試験対策に取り組んだ。



見事、第一志望校へ入学したわたしは母への依存を強め、母もまた我が子への介入がエスカレートしていった。



しかし予定は狂うものである。


2年生になったわたしは、重要な期末テストで結果を残せず、あろうことか学年主任に呼び出しを受けてしまったのだ。……そう、母親同席で。


帰宅すると母は食器や家具に当たり散らし、こう喚いた。


「進学校なのにあんな成績なんて……! どうして!?

 今日の呼び出しも他のママ友に見られたわ! もう生きていけない!!」



わたしは母の言う通りにすると、冷たくなった『それ』に質問をした。



「ねぇ、母さん。この次はどうすればいいの?」





(具合が悪いシリーズ『それ』 おわり)

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それ 長万部 三郎太 @Myslee_Noface

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