【短編】好きっていって、いってみたい

夜葉@佳作受賞

第1話「好きって、誰かに伝えた事ある?」

 桜咲く新学期。

 それは教室で二人、昼食を終えた後の事だった。


「優ちゃんはさ……」


「んー?」


「好き。って、誰かに伝えた事ある?」


「ぶふーっ!!」


 咥えていたストローを噛み潰し、紙パックの中に残っていたいちごミルクが制服の上に雫を作る。

 幼馴染の思わぬ一言に私はこれでもかと取り乱し、教室の中をざわざわと騒がせてしまった。


「優ちゃん大丈夫!?」


「だ、大丈夫……ちょっと洗ってくる。とりあえず櫻子、あんたもついて来て」


「え? あ、うん。……え??」


 動揺する幼馴染、櫻子の手を引いて私は教室を後にする。

 指先が触れた時、彼女の顔が真っ赤に染まっているのが目に入った。


 人前で恥をかいた私より何を赤面する事があるのか。と私は不思議に思っていたが、彼女が真っ赤な理由を知るのは、そう遠くない未来の事であった。

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