第18話 騎士様の困惑 ロイドside
ローズ王国の王都、リベルタ。
その王城の第一騎士団の訓練場。
控室で剣の手入れをするロイドは仕事着である甲冑姿。
一見すると真面目な表情でいつも通りに見える。
しかし彼は内心、非常に悩んでいた。
(さて……どうしたものか……)
悩みの種は目下、昨日助けたクロエという少女についてだ。
正直、助けたのは勢いだった。
王都の騎士団に所属しているというだけあって、ロイドにも強い正義感と優しさを兼ね備えている。
下衆な男三人の餌食にかかろうとしている少女を放って置けるはずもなく、非番でありながら救出した。
そこまでは良かった。
問題はその後で、気絶した上に体調が悪そうなクロエを放っておけず、さほど遠くない家に連れ帰った。
体調が回復次第、憲兵に引き取ってもらう予定だったが……話を聞いた所かなり深い訳がありそうで、引き渡すよりもしばらく保護をする方向の方が良さそうだと判断した。
もちろん、国に仕える身としては褒められた行為ではないことは重々承知だ。
国に対する忠誠心も規律性の持ち合わせもロイドには充分にあったが……過去、国の命にだけ従った結果、助けられた命も助けられなかった過去の事も思い出し、この判断に至った。
それに加え……。
(なんというか……放って置けないんだよな……)
いつも流し込むように食しているポトフを美味しい美味しいと泣きながら食べた彼女。
初めてのお風呂に目を輝かせていた彼女。
子供のように目を擦り眠そうにしていた彼女。
王都という都会では、どこか擦れた人ばかりだ。
その中で、クロエという少女は純粋で真っ直ぐで裏表のない、ロイドからすると珍しい人間に映っていた。
相当な田舎から出てきたと言ってたから、納得ではあったが。
そんなクロエの様子を見ていると、胸のあたりが温かくなる。
もう少し彼女を観察していたい、そんな気持ちを抱いたのだ。
理性ではよくない状態ではないと思いつつも、感情ではもっと彼女と一緒にいたいと思っている。
これまで剣一筋で生きてきた彼にとって、初めての感情であった。
自分が感情の起伏が少なく表情に出ない性質で本当に良かったと心底思う。
もし表情に出てしまう性格だったら、昨日今日で数多の間抜け面を披露してしまっていたに違いない。
兎にも角にも、ずっと今の状態のままというわけにはいけない。
どうするのが最善手か考えているものの中々良い落とし所が見つからず悩んでいると。
「さっきからずっと同じ所しか磨いてないけど、何をぼーっとしてんだ?」
息をついてから振り向く。
長めの金髪、澄んだブルーの瞳。
女性関係では一秒たりとも困ったことはないのだろうと想像に容易い容姿。
「なんか悩み事か? ん? 人生経験豊富な副団長様になんでも相談してみ?」
いつもの軽薄そうな笑顔を浮かべて、第一騎士団の副団長フレディはそう言った。
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