意外と近くにいた

学校に登校すると強烈な異臭が僕の鼻を突いた。なんだろうこの臭いは。何かが腐ったような……そこで僕ははたと思い出した。昨日の夜スーパーの路地裏でジャパニーズジャックなる存在をごみ箱に蹴飛ばして生ごみを被らせたことに。しかもにおいがするのは僕の隣の席、つまり鵺野さんだ。もしかして鵺野さんがジャパニーズジャックなのだろうか?


「ふたちゃん。めちゃめちゃ臭いんだけど。どうしたの?」


クラス全員が鵺野さんが発する臭いに顔をしかめる中、そんな鵺野さんに最初に話しかけたのが最上さんだ。


「だ、大丈夫よ。登校中にこけてごみ箱をひっくり返しちゃってさ、それで生ごみ被っちゃったんだよねーホント災難だよ」

「なにそれ。ウケるんですけど」


それを聞いた木元さんがケタケタと笑う。それを聞いたクラスのみんなは鵺野さんをかわいそうなものを見る目で見ていた。


「なんで家に帰ってシャワー浴びなかったのさ」

「だって、学校遅れちゃうじゃん」

「怪我とかしなかったの?」

「したよー派手に転んじゃったからねえ」


そう言って鵺野さんは右腕にある痣を見せた。その痣の位置は昨晩ジャパニーズジャックに掌底を撃ち込んで防御された場所とまったく同じところだった。これはほぼ確定じゃないかな?僕はみんなが離れて行って鵺野さんがトイレに立ったところでつかまえた。


「鵺野さん、昨晩は生ごみかぶせちゃってごめんね」

「本当だよ~。そのせいで臭いが取れなくてめちゃくちゃごみ臭……い」


鵺野さんがギ、ギ、ギと首をこちらに向ける。


「か、カマかけたわね……?」

「かけたね」


いや、簡単に引っかかりすぎでしょ。よくこんなので今までばれなかったなあ。


「なかなかやるわね化田くん。私を警察に引き渡すのかしら?まあ、それができる者ならやってみなさい」

「そんなことはしないよ」

「じゃあ何をするのかしら。私を脅して肉体関係に発展させようってのかしら?」

「だから何もしないって……なんで鵺野さんがあんなことをしてるのか理由が聞きたいんだよ。僕は鵺野さんが何の理由もなく人殺しなんてしないって思うし」

「そりゃそうよ。てか、理由もなしに人を殺すって何なの?私のことをサイコパスか何かだと思ってる?」

「だからその事情が聞きたいって言ってるじゃないか」

「もしさ、私がその事情を教えたところで化田くんは協力してくれるのかしら?」

「するわけないだろ」

「じゃあ、私に話す必要はないわね。黙っててくれれば私は何もしないわ。過ぎた好奇心は身を滅ぼすわよ」

「知ってる」

「わかってるならやめときなさいよ」

「話してくれないなら警察に突き出すよ」


これはハッタリだ。正直僕にクラスメイトを警察に突き出す度胸はない。でも鵺野さんには結構効いたみたいだ。


「わかったわよ。放課後、屋上に来てくれたら話すわ」

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