巻き込まれ
「遠莉~和希を起こしてきて~」
「わかった~」
まったく、こんな時間まで寝てるなんて。でも仕方ないか。昨日和希は命を懸けて私たちのために戦ってくれたんだから。もう少し寝せててあげたいけど今日も学校だし起きてもらわないと!私は和希の部屋の扉をドン!と勢いよく開けて入るとベッドで丸くなっている和希を揺さぶる。
「ほら和希起きて~。学校遅れるよ~」
すると和希はうっすらと目を開けた。
「りりー?」
「リリーさんじゃなくて遠莉だって。ほら、早く起き……きゃあっ!?」
和希の肩に手をかけたらとんでもない力でベッドの中に引きずり込まれた。私は胸の辺りをがっしりとホールドされてしまっている。私は頑張って和希の腕の中から抜け出そうとするけど、和希の腕力は圧倒的で、どれだけもがいてもうんともすんとも言わない。寝ぼけてこれってどうなってるの!?でも頑張っていたら何とか体勢を変えることに成功した。胸が和希の圧迫から解放される。
「せーのっ!」
私は腹筋の要領で体を持ち上げようとしたのだけれどやっぱりだめ。もう一度やろうと寝転がったその時、和希の寝息が私の耳に当たった。
「ひゃうんっ!」
へ、変な声が出た。うう、和希に聞かれてなくてよかった。でも、早く抜け出さないと変な気分になってきちゃう!
「んーっ!」
「遅いですよ!カズキ、トオリ!朝食……」
「り、リリーさん!はあっ、はあっ、助けて!」
「無理やり起こそうとしましたね?」
リリーさんが呆れた顔をして私を、そして和希を見る。
「ほら、カズキ起きて」
リリーさんに揺さぶられた和希はまたうっすらと目を開けた。
「んにゅ……リリー?」
「はい。カズキのリリーですよ。朝ごはんだから起きてください」
そう言われた和希は私を放すとやっぱりまだ眠いのか目をこすりながら下へと降りて行った。
「リリーさん、助けてくれてありがとうございました」
「あはは、グルルタスでも頑張った次の日はあんな感じだったからね。日によっては起こしに来たガチムチの男をベッドに引きずり込んでいた日もありました」
懐かしそうに語るリリーさんの話を聞いて私はその光景を想像して思わず吹き出してしまった。
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