遅筆作家の即興小説練習帖

二四年三月の３つのお題140

　診断メーカー「小説で使いやすいかもしれないフリーお題メーカー」より、二〇二四年三月にTwitter上で掲載した140字小説です。

　お題は「生き延びた理由／光なき星／スランプスランプスランプ」。

●生き延びた理由

　剣を捨てる。少女はその場に膝をついた。瑞々しい黒瞳は、斜陽の空を見上げる。

　生き残った。私が勝者だ。

　しかし、少女の胸にはぽっかりと穴が空いていた。

　彼女が勝てたのは、仲間のおかげ。彼が力を分けてくれたから。自らの命を引き換えにして。

　少女は涙を流す。彼女に残されたのは、孤独だった。

●光なき星

　星読は空を見上げる。漆黒の天蓋に広げられた銀砂。その形をなぞって世界の運命を読み解いていく。

　眩い一等星の隣に暗い星を見つけた。夜闇よりも深く黒々とした一点。不吉の前兆かしら、と首を傾げる。

　読み解いたのは、変革。世界は大きく揺れ動く。

　面白いことになりそうね、と口元は孤を描いた。

●スランプスランプスランプ

　原稿を前にしているが、筆が全く進まない。言葉がまるで出てこない。そればかりか、書くシーンも思いつかない。

　おかしいな、書きたい物語があるはずなのに。

　登場人物は微笑むばかり。情景も浮かび上がらない。

　ずっとこのままか。

　書かねばならないのに。物語を紡げない焦りばかりが私の中にある。る。