二四年二月の3つのお題140
診断メーカー「小説で使いやすいかもしれないフリーお題メーカー」より、二〇二四年二月にTwitter上で掲載した140字小説です。
お題は「幻惑の海/忘れられても、忘れ得ぬ/月移りて花の影」。
●幻惑の海
海を切り取った水族館。そこが私のお気に入り。水槽に映った自分を見つめて、人魚になるのを夢想する。
ある日鏡像が変化した。魚の尾鰭。鱗の肌。濁った瞳。人の形をした異形の姿。それはまるで怪物で。
あれが私の望む姿? それとも私の本性か。
水槽の中には、誰もいない。魚が泳いでいるばかり。
●忘れられても、忘れ得ぬ
眠る君の額にそっと口づける。別れのときだ。君に焦がれ尽くしてきた日々も、今日で終わり。僕はもう君に会うことはないだろう。
僕のいない未来を想像する。僕のことは忘れてしまえばいい。それで幸せになれるなら。でも僕は、君を想うことが一番の幸せだから。心の隅に君を置くことをどうか許して。
●月移りて花に影
桜の花が咲くと、縁側で眠る癖がついた。庭の桜を眺めながら亡き人に想いを馳せ、眠るのだ。
ふと夜中に目が覚めた。天頂の満月の明かりに満開の桜が浮き立っていた。
木の根元には、白い影。
懐かしき麗人の姿に、素足のまま庭に降りる。近寄ると影は立ち消えて、そこには散った花びらが漂っていた。
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