五月の5つのお題140

 診断メーカー「5つのお題でやってみましょう」より、五月にTwitter上で掲載した140字小説です。

 お題は「鏡合わせの双子/鉄塔から見上げて/遺品/鉄格子の向こう側/縁は蝶結び」。



●鏡合わせの双子

 まるで太陽と月だと言われたことがある。私と双子の妹のことだ。私が月で、妹が太陽。

 たしかに妹は周囲を明るく照らしている。私も真似して明るく振る舞ってみるけれど、妹には遠く及ばない。

 それでも、いや、だからこそ知っている。妹が光の下に隠している本音を。私と同じものを抱えていることを。



●鉄塔から見上げて

 手を広げると、空も飛べそう、なんて思ってしまう。遮るもののない青空。白い綿雲だけが流れていく。足元の小さな街並みには関心がない。

「どうして? いい景色なのに」

 隣の君は鉄塔からの俯瞰風景に見惚れている。

「だって、そこに自由はないよ」

 しがらみだらけの街から逃れたくて、ここに来た。



●遺品

 兄の死は突然だった。だから、部屋に残されたものは数多くある。勉学のもの、趣味のもの、ゲーセンで取ったガラクタまで。

 その中で私が形見に選んだのは、ひしゃげた眼鏡。今はレンズだけがアクセサリとして私の首に掛かっている。

 レンズ越しに覗く景色は小さく歪む。これが兄の見ていた景色だろうか。



●鉄格子の向こう側

 嘘だろう。声を上げるところだった。

 私が訪ねたのは、城の地下に閉じ込められた伝説の魔獣。長いこと囚われているのだから、さぞ恐ろしいだろうと思っていた。

 だが実際、鉄格子の向こう側に居たのは、幼気な生き物。化け物にしても、あまりに頼りない。

 これをどうするべきか。私は頭を悩ませた。



●縁は蝶結び

 一度結んだ縁は強固なものだと信じていた。幼馴染の絆は特に。一緒に過ごした時間が、結び目を固くしているのだと思っていた。

 それが覆されたのは、中学の時。彼は私を突き放した。

 縁は蝶結び。片方の紐を引っ張るだけで、簡単にほどけてしまう。

 今となっては連絡を取ることさえなくなった。

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