第4話
階段を登りきると、そこには、塔の上とは、思えないとても広い街並みに出くわした。
「何なんだこの空間は?塔の中のはずだよな?」
「ほっ、ほっ、ほ」
「誰だ!?」
「待て待て。敵意を持つでない。ここの住人じゃよ」
「住人?」
「そうじゃ」
と答えられたが、ジークは顔しかめた。老人は何か浮世絵離れした雰囲気を持っており、直感的にすぐその言葉を鵜呑みにすることが出来なかった。
「ここはどこなんだ?」
「ここは、地上と切り離された土地じゃよ」
「信じられない」
「信じられなくても、そうなのじゃよ。この塔は」
ジークは頭をかきむしった。それで少しだけ冷静になる。
「そうだ。聞きたいことがある?」
「質問ばかりじゃな。まあ、いいわい。で、なんじゃ?」
「俺以外に、ここに来た人が居たと思うが、どこに居る?」
「地上に帰ったぞ。1人残らずな」
「1人残らず?」
「ああ、今ここには儂とおまえ以外おらん」
「嘘だ!親父はまだ帰って来てない!」
「嘘ではない。入り口の扉は、ここから出たら、開くようになっておる。そして、1人入って来たら閉まる仕組みじゃ」
「じゃあ、俺は親父と入れ違いに?」
「そうなるわな。あと、これは忠告じゃ。地上が恋しいなら、ここから早くでることをオススメする」
「何でだ?」
「出れば分かる。出口はここからまっすぐ歩いて行くと、鐘のある家のドアじゃ」
そう言って老人は、口を閉じ、そそくさと近くの家屋に入って行った。
1人残されたジークは、色々老人に訊きたいことはあったが、肩透かしを喰らわされた気持ちになった。
「とりあえず、鐘のある家に行くしかないか」
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