人生RPG化の力を得た俺だが、ステ振りに失敗。悪行系スキルガン積みに。ヒロインたちにクソムーブしかできないが、破天荒ぶりに惚れられてしまう

石製インコ

第一章 もよもふ いんきゃ HP10 MP115

第1話 人生RPG化

 ステータスにポイントを割り振ってください。

 また、ポイントを消費することで、特殊なスキルや特性(特殊能力)を取得できます。



 1/2979


 ①羞恥耐性     : 15

 ②骨格の強度    : 19

 ③鼻くそ生産速度  : 94

 ④料理       : 6

 ⑤リーダーシップ  : 7

 ⑥数学       : 1

 ⑦煽り耐性     : 5

 ⑧写実画      : 3

 ⑨書道       : 2

 ⑩ちんちん音頭   : 75

 ⑪政治の話題    : 9

 ⑫ファッションの話題: 3

 ⑬カエルへの愛着  : 29

 ⑭サッカー     : 1

 ⑮膵臓の強さ    : 14

 ⑯速筋の肥大速度  : 4

 ⑰官能小説朗読   :219

 ⑱英語       : 1

 ⑲スワヒリ語    : 35

 ⑳エロ単語書道   :206

 ㉑物理学      : 1

 ㉒肛門括約筋強度  : 10


 残りポイント:0


 ▷次のページに進む 2/2979

 ▷スキル取得画面に移動

 ▷特性取得画面に移動

 ▷ランダムエディットをおこなう


 残り時間:00:59:11



「や、やばい……これをたった1時間で……?」


 目の前に広がるヘッドアップディスプレイのように映し出されたステータス画面を見て、俺はそうつぶやいた。



 ここは、どこまでも真っ白な空間が続く場所。

 死者の間だ。


 俺は、ジジイが乗ったプリウチュに撥ねられて死に、――そして、ゲームの女神様に選ばれたのである。





 今から数分前。



 勉強ダメ。

 スポーツダメ。

 芸術ダメ。

 社交性ゼロ。

 恋愛経験ゼロ。

 得意なものはゲームのみ。


 そんなダメ陰キャの俺は、「あーあ……この世界がゲームみたいになったらなぁ……」などとほざきながら、ウーパーイーツのバイトを遂行するため自転車をこいでいた。


 モンスターを倒すだけでグングン能力が伸び、おまけにお金まで貰える。

 嫌な学校に行く必要もないし、人間関係に悩む必要もない。

 しかもヒロインたちは、みんな主人公に好意的。

 ゲームの世界最高! 現実世界最悪!


「……いや、待て! そういえば今日俺、葉々勝ははかつさんに話しかけてもらったんだった! やっぱり現実世界最高!」


 新学期、幸運なことに俺はクラスナンバーワンの美少女、葉々勝須瑠代ははかつ するよさんと席が隣になった。

 しかし結局、一言も話しかけられないまま、席替えとなってしまう。

 俺は自分の不甲斐なさを嘆いた。


 しかも次の席は、クラス一の不良娘、金髪ギャルの星野白金の隣である。最悪だ。


 ん? 名前は何て読むのかって?

 そのままプラチナだ。いわゆるキラキラネームというやつである。


 こんな名前を付けてしまう両親の元に生まれたのだ。どんな子に育つかは簡単に予想できるだろう。

 星野はしょっちゅう学校をサボるのだが、それはパパ活をしているからだそうだ。


 いや、プラチナちゃん(笑)の話などどうでもいい。

 俺は今、葉々勝さんの話をしたい。話を戻そう。


 いざ席替え開始となったので、名残惜しみながら席を立ちあがると、なんと葉々勝さんから話しかけられた。


「短い間だったけどありがとね。楽しかったよ」


 ズキューン!

 一発でハートを射抜かれた俺は、16歳にして初めての恋に落ちる。


 俺は彼女のほのかな笑顔を思いだしながら、ニヤニヤと配達先のラブホテルへと到着した。



「俺もいつか利用してみたいものだぜ」


 そんなことを呟きつつ、フロントの人にお弁当を渡す。


 ――待てよ?

 もしかしたら葉々勝さんは、俺のことが好きなのでは?

 だとしたら、マジで葉々勝さんとここに来られるかもしれない。


 そんなことを思っていると、フロントに相当な美少女がやって来た。

 お、あれは……!


 ――葉々勝さんだ!

 やったー! 願いが叶った! 俺は葉々勝さんとラブホテルに来たぞおおおおお!




 ん?


 正気に戻る。

 なぜ葉々勝さんがここに……?


 しかも隣にいるのは、デブでハゲのおっさんじゃないか。


「須瑠代ちゃん、今日もホテル代別2万でいいかな?」

「毎度ー! 今月ピンチだったから助かるよ、おじさーん!」


「ははは、それは良かった。ところでなんか今日は機嫌良さそうだね?」

「今日席替えがあって、隣のキモい奴とようやくおさらばできたんだー!」




 な、なんということだ……。


 俺は葉々勝さんに会わないよう、駐車場の方へと向かう。

 あまりのショックに、足がおぼつかない。

 駐車場の歩道をふらふらと進む。



 ドンッ!

 左からすさまじい衝撃を受け、スローモーションで宙を舞う。


 ――ああ、こりゃ死んだな。

 やっぱり現実世界は最悪だったぜ。


 神様、お願いします。

 来世はゲームの世界に生まれ変わらせてください。

 そこでなら、俺でも幸せになれると思うんです。


 ――あ、でもダーク〇ウルとかSIR〇Nの世界は勘弁で。



(その願い、叶えましょう)


 心地良い女性の声が脳内に響き渡った次の瞬間、俺は真っ白な世界に横たわっていた。



「ここはいったいどこだ……なんて言うと思うか。何回擦られたテンプレだと思ってんだ」


 起き上がると、案の定目の前には美しい水色の髪の女神様が。


「私はゲームの女神。あなたに特別な力をさずけます」





 女神様の話を要約するとこうだ。


 ・異世界転生ではなく、俺がプリウチュに轢き殺される10秒前に復活

 ・復活後の世界では、俺だけRPGのシステムになっている

 ・今から1時間だけ、俺のキャラクリが可能。(外見は不可)

  ※時間内に終えないと、同じステータスで復活となってしまう。



 この話を聞いた時、俺は「女神様最高!」と思っていた。

 いらないステータスのポイントを削り、学力、運動神経、芸術、話術などに極振りすれば勝ち組確定だからだ。


 しかし、いざステ振り画面を開いたら、それがとんでもなく甘い考えであったと判明する。


「1/2979ページ!? 女神様! いったいステータスは何項目あるんですか!?」

「65536です。ちなみにステータスの最大値は255で、100を超えるとプロ級です。一項目でも200を超える者は百年に一度くらいしか現れません。アレクサンドロス大王、マルクス・アウレリウス・アントニヌス、孔子などがそうですね」


「なぜその時代にゲームの神が……ちなみに1桁だとどんな感じですか?」

「限りなくゴミですね。たとえば肛門括約筋強度が3だと、ウンコが出そうと思った5秒後くらいには、もう漏らしていますよ。料理が1の場合は、チャーハンを作っていたはずなのに、なぜか放射性物質が出来上がります」


 やべえ!

 よっぽど使う必要のないステータス以外は10以上振っておかないとまずいぞ!



「クソッ! 官能小説朗読や、エロ単語書道といった訳の分からないステータスが偉人レベルなのに、数学や物理、サッカーがゴミレベルじゃねえか! どおりで何やっても上手くいかねえ訳だ!」


 無意味なステータスのポイントを削り、他の項目にポイントを振っていく。

 そして次のページへ。


「お、ゲームがあった! え……?たった68だったのかよ! 唯一得意だと思ってたものが、ちんちん音頭より低いじゃねーか!」


 文句を言いながら、残り時間を見る。


 ――57分!

 それをあと2977ページ!?


 しかもステータスの並びはめちゃくちゃだ。ジャンルごとにまとまりがないうえに、これとは別にスキルと特性まである。終わる訳がない。



「女神様、時間の延長をお願いします! 1時間では絶対無理です!」

「それはなりません。神の掟は絶対なのです」



 ちくしょう!

 なんとかやるしかねえ!




 それから55分が過ぎた。


「うわあああああああああ! 残り2分きったのに、まだ131ページ目だああああああ! しかも、どうでもいいステータスを削ることしかできてねえええええ! どうしよおおおおおお!」


 このまま時間が来てしまったら、初期値に戻されてしまう。

 かといって、キャラクリを終了しようにも、300ポイントも残してしまっているのだ。

 これを使わないまま終えてしまうのは、あまりにももったいない。


「どれか適当な項目に極振りするか……! だが、どれに……!?」


 悩んでいるうちに残り1分。

 もうポイントを振る時間がない。


「女神様あああああああ! 助てくださいいいいいい! 官能小説朗読家にも、エロ単語書道家にもなりたくないんですううう!」

「それならば、ランダムエディットを試してみてはどうでしょう?」


 ランダムエディツト……!

 つまりステ振りや、スキル取得を運任せにするということか……!


 どうする?


「決まっている! 今が最低なんだ! それより悪くなることはないはず!」



 残りポイント:317


 ▷次のページに進む 132/2979

 ▷スキル取得画面に移動

 ▷特性取得画面に移動

 ▶ランダムエディットをおこなう


 残り時間:00:00:27



 ランダムエディットにタッチした途端、まばゆい光が俺を包む。

 どうやら現世に帰還するようだ。



「あ。言い忘れていましたが、ランダムエディットは名前もランダムに――」



 なんか女神様が、とんでもないこと言ってた。

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