『くらいなあ、くらいなあ』

やましん(テンパー)

『くらいなあ、くらいなあ』

 

 『これは、たわ(あ)いのない、お伽噺です。』






 『世界から、暗闇を無くそう。』


 地球大統領の、強力なてこ入れがあり、また、宇宙送電が簡単にできるようになったのと、何者にも遮られない、無碍光(むげこう)みたいな新技術が開発されて、自宅のなかに、たとえ電灯がなくても、無料で明かりが届くようになったのです。


 犯罪が、急激に減少しました。

 

 電気が無かった場所でも、例えば、子供たちが、もう暗闇で、勉強しなくて良くなりました。


 台風で、停電することも無くなりました。


 人間の性格が、明るくなりました。


 しかし、困ったことに、年がら年中、明るい。


 昼も夜もね。


 カーテン閉めても、明るいままなのです。


 これは、いささか、やましんなどには、問題でした。


 光は、刺激です。


 いつも明るいと、却って、落ち着きません。


 でも、それは、ある程度、想定はされていたのです。


 暗闇を作る為には、特殊な素材でできた蚊帳みたいなものを吊るす方法が、一番安価で、楽でした。


 しかし、常に、エネルギーにさらされるので、人体には無害なのに、蚊帳は、段々弱くなり、ついに、効果がなくなります。


 毎日使うなら、年に一回は取り替えが必要で、ひとセット、二万ドリムします。


 これは、職業から引退している、資産のない人には、かなりの負担でした。


 新築ならば、もっと長持ちする機材を導入する手はありますが、かなり、お高い。


 スイッチを入れると、暗くなるのです。


 これには、電気料金がかかります。


 つまり、本来、明るいはずのところを、無理やり暗くするのですから、コストが掛かって当然でした。


 そこで、倹約が必要な人は、特殊アイマスクを使うことになりますが、これは、目を悪くする可能性が高いことが分かりました。


 特に、粗悪品は。


 そんななか、ついに、発売されたのです。


 暗くなる電灯です。


 明るくなる蛍光灯とか、LEDとかと、同じように、暗くする器具です。


 最初は、上手く行かなかったようです。


 しかし、現代のエジソンさんとか、テスラさんとか呼ばれた、ある発明家さまが、完成させました。


 割にお安くて、まあ、昔の蛍光灯位の感じです。


 早速、電気やさんに行きました。


 満員、雑踏してました。


 こんなに、売れるとは思わなかったらしい。


 『人々が、このように、暗闇を欲しがるのは、珍妙だ。』


 地球大統領は、そう、コメントを発表しました。


 『自分が大統領で、良かったと、思いたまえ。この世は、光に満たされたのだ。史上最高の成果だ。』


 だ、そうです。


 ぼくは、段階変化ではない、連続変化タイプを寝室用に、一本だけ買いました。


 効果がある範囲が、団地サイズの6畳間くらいまでだそうです。


 で、昔の蛍光灯用の機材に差し込んで、リモコンを回しました。


 ボリュームアップするほど、辺りが暗くなります。


 最大にしても、真っ暗にはなりません。


 『まあ、丁度良いかなあ。』


 と、思いました。



 天文台などは、料金を払って、周囲を暗くすることが可能で、早い話し、お金さえ払えば、一日中の観測も可能なんだそうです。


 ただし、一定の範囲内に、他の施設があると、巻き込むことになり、『暗害』とかも言われましたような。


 多額の費用がかかりますが、24時間、光学的観測ができるのは、大きな、メリットでもあったようです。


 しかし、ま、ぼくなんかからしたら、一体、なんのことやら、良く分からなかったのです。



 しかし、これは、実は、生態系に、大打撃を与えることになりましたとさ。




    ・・・・・・・



         おしまい


 


 


 

 

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『くらいなあ、くらいなあ』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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