Epilogue: Arc
第27話
――目の前に一筋の線があるとする。両端のうち一方が「はじまり」ならば、もう一方は「おわり」と言える。
「おわり」から「はじまり」へ向けて、
私達が創ろうとしていたのは、つまりそういうモノだった。始まりと終わりがあって、しかし終わりは始まりへと回帰する。いまの私ならば、そんな半円を見て地獄みたいだと思うだろう。
そう、私達はあらゆる犠牲を費やして天国に似た地獄を創った。
などと言ってしまっても、怒られることはない。怒るという感情は迫害に繋がるから排除された。そんなお伽噺が本当になったくらい、そのくらい突拍子もない事を成し遂げたのだ。永遠ではないけれど、永遠に限りなく近い発明品を私達は獲得した。
硝子の部屋と苺のショートケーキ。そして数多の物語たち。世界を変える生き物はそこで生まれ、そこで覚醒に至る魂を獲得した。
私はその隣で、泣きぼくろの映える少年としかめっ面の少年が育ちゆく過程を、少しずつ透過しリセットされてゆく脳で見届ける。
エクリプスの終わり、社会の終わり、文明の終わり。
そして新たなる人生の始まり。模倣の始まり。調和の始まり。
世界は円環の形を取る。あらゆるものに始まりと終わりと次の始まりが訪れる。
「キラキラ光るコウモリさんよ……」
アオイは傍らで詩を歌う。きっと終わらないお茶会を想像しながら。永遠に続く幸福を願いながら。
海岸線を眺めながら、よちよちと歩けるようになったナルミとケンシン、かつてそう呼ばれていた子供を眺めながら。私と同じ傷痕のついた腕を振り回しながら海岸線を走り回っている。アオイは起き上がる意志を喪い人形のようになった私の髪を撫でる。
かつて私がアオイにそうしていたように。
今はアオイが私をそうしている。
物語は繰り返す。人生はやり直される。全ては想像力を取り戻し、優しさに満ちた世界を取り戻すために。
新たなる円環は、ここから始まる。
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