第7話 魔物討伐


 冒険者掲示板には、様々な情報が書いてあるため冒険者でなくても利用する人が多い。

 もちろんダンジョンの事も書いてある上に、災害情報やイベントカレンダーなど、この町のメインの情報源となっている。


 僕は、ダンジョンを探すため掲示板を眺めていると、先程のコアトル大量発生の記事が貼られている事に気がついた。

 他にも銅の短剣の価格が高騰している事も書いており、掲示板をこまめにみる癖をつけた方がいいと感じた。


 掲示板をちゃんと見ておけば、コアトルに短剣で挑むなんて事しなくて済んだんだろうな。

 今まではただの付き添いでしか、冒険者経験がなかったから、冒険者としての基本から学んでいかないとな。


 反省を活かし、掲示板の最新情報の欄を確認してからダンジョンを探し始めた。


 今まで攻略してきたのは、難易度の一番低いラットダンジョン。

 次に行くとしたら、二番目に難易度の低いダンジョンに行くのが普通だが、一つ不安な事がある。

 僕のスキルは、どのダンジョンでも同じような能力を発動できるのか。

 ラットダンジョンの場合は、数字が出てきてそれを唱えるとその場所に移動する乱数のようなものだった。

 もし同じ能力を発揮できるのであれば、ボスをスルーできる事を前提にダンジョンを選べるが、それがまだわからない以上、難易度の低いダンジョンで色々試しながらレベルを上げるのが一番安全だろう。


 僕は一つの記事を指差した。


 メラスタダンジョン。

 難易度は優しめの中級と言ったところだろうか。

 明らかにラットダンジョンよりかは難易度は上がっている。

 道中の魔物もEランク級がほとんどで、手強い魔物が多いらしい。

 ただその分、魔物を倒した時の経験値も多いし、報酬も豪華らしい。


「やるしかないな」


 僕は、小声でそう口に出し早速ダンジョンへ向かった。


 ダンジョンの前に着くと、急に緊張感が込み上げてきた。

 

 ラットダンジョンをクリアできたからと言って、魔物を倒せるわけでもない。

 スキルも問題なく使えるって保証もないし、何より道中の魔物の情報が一切ない。

 Fランク級ならまだしも、Eランク級の魔物になんの情報もなしで挑むのはおそらく僕ぐらいだろう。

 ただ、攻略する事ができればより良い報酬を手に入れることができる。


 パーティーにいた頃は、上級ダンジョンばかり行っていたのでDランク級以下の魔物とは出くわしたことがなかった。

 もちろん僕は一度も倒したことはない。ただ実際にその場の戦いや相手の攻撃は見てきている。

 それに比べればEランク級の魔物なんて大丈夫だろう。


 舐めてかかっては行けないという事は理解していたが、自分の脳みそを騙すために必死になって思ってもない事を口に出していた。


 深く深呼吸をし、自分の頬を両手でパチン!と叩き、気を張り直した。


 苔が生え、歪な形をしたダンジョンの入り口をくぐる。

 前回と同様、ステータス画面が目の前に現れた。


 もうあんな情けない声をダンジョンには響かせない。

 このダンジョンは特に変わった情報も出てなかったから、おそらく中で遭遇する冒険者も多いだろう。

 一目見た瞬間に舐められては、絡まれる可能性があるから自信を持って歩こう。


 ダンジョンの中では、ピンチになった冒険者や性格の悪い冒険者が、自分より弱そうな冒険者から魔物から取ったアイテムや報酬などを巻き上げる事が多々ある。

 あまりにもやりすぎると、ギルドに報告され冒険者としての資格を剥奪される事もあるそうだ。


 ただ、こうして絡んでくる冒険者は何かを理由にし言い逃れしてきているものが多い。

 一番安全なのは、舐められない事。

 たとえ弱くても、頑張って人を寄せ付けないオーラを出し続ければ問題ない。


 胸を張りながら、奥へ進んでいくと後ろから何か物音がした。

 振り向くが、音は止まってしまった。


 音が止まった?

 頭のいい魔物か?僕が想像するものだとDランク級以上のものだからその中のものではないだろう。


 前に進もうと、振り返った瞬間。

 後ろからものすごいスピードで何者かがこちらに飛びついてきた。

 咄嗟に体のバランスを崩しながらも避ける事ができた。


「痛ってぇ……」


 音が鳴った瞬間に振り返ったけど、速すぎて残像しか視界に捉える事ができなかった。

 目の前にいる魔物を前に、バランスを崩し横たわっていた状態から急いで立ち上がった。


 魔物はそれを前に、荒い呼吸音をダンジョン内に響かせている。


 四足歩行の魔物と言ったら、おそらく狼の魔物ラニアンだろう。

 前にラニアンの成長した姿のメラニアンと遭遇した事があった。

 その時もかなりのスピードに手こずっていた記憶がある。

 

 ただ、こいつの唯一の弱点。

 それは、速すぎるが故にすぐに止まる事ができない事。

 こいつの動きをよく見て、その先で剣を構えれば力関係なしに真っ二つに出来る。


 剣を構えると、ラニアンは吠えながらこちらに突っ込んでくる。

 ラニアンの動きを先読みし、剣を構えながら回り込む。


 あとは僕が、ラニアンの力に耐えるのみ!


 ラニアンの鋭い牙と銅の短剣がぶつかり合った。

 力が強すぎるあまり、手が震えてくる。

 銅の短剣もラニアンの牙に耐えきれず刃こぼれし始めてきた。


「耐えろぉぉぉぉぉぉ!」


 大きな声を出し、剣を振り切った。

 与えられた力が急になくなった反動で、僕も動きを制御出来なかった。


 手に持っている短剣が壁に刺さり、後ろを振り返るとラニアンは真っ二つになっていた。



 ――――――――――――


 ヴィリー・ルート 15才 男

 レベル:5 +4

 MP:10

 攻撃力:30

 防御力:30

 素早さ:30

 スキル:透視

 装備:銅の短剣


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雇われ者として入っていたパーティーを追い出されたので、効果も分からないスキルとダンジョン攻略します。 〜バグスキルによって表示された、簡略化された乱数でダンジョンを無双する〜 熊手マコト @T4-clock

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