第5話 ティアラの魔法2
『胸元で可愛く小首を傾げながらハートマークを作るのがコツらしいですわ』
『まぁ、まるで小悪魔の様ですわね』
『ふふふ、あざといですけど、どの殿方もこれでイチコロらしいんですの。わかってても引っかかってしまう怖い魔法なんですのよ?』
『なんて恐ろしい。でも、成功したらメロメロですわね』
◆
お姉様方から聞いた話はこうだった。けれど、カイル様は全然引っかからなかった。わかっててもメロメロになるって聞いたんだけどな。
(こんな見かけじゃやっぱり駄目なのかしら)
「カイル様、魔法………かかりました?」
小首を傾げ自信なさげに尋ねてみる。
「カイル様…。どうして目を閉じてるんですか?」
「………………」
「カイル様?…もしかして効きましたか?」
「…………………ふふっ」
カイル様はそのまま顔を隠してしまった。
「わぁ…!本当にかかったんですか!?」
下から覗くように近づく。が、それがまずかった。
「カイルさ……まっ…―――――」
その瞬間を待っていたかのように勢いよく抱きしめられてしまった。
「ふふっ…、はははっ。すごい魔法だね。いとも簡単に魅了させられてしまったよ」
耳元で囁かれ、こちらも魅惑と混乱の魔法がかかったように動揺する。さっと手で耳を塞ごうとしたが、その手さえも掴まれてしまった。
「駄目だよ。させない」
「…………!!!!!!!カ、カイル様、なんだか雰囲気がぁ。目が座ってるような……っ!!!」
「ククッ、そうさせたのはティアラだけど?」
「え?そ、そんな。だって、これは………」
魔法だけれど魔法じゃない。
「お遊びでもかかってしまう魔法というものがあるんだよ?」
クスクス笑いながら頬にキスを落とされる。
「っっ………!」
まさかこんなことになってしまうなんて。予想していなかった事態にたじろいでしまう。ああ、なんて魔法なのかしら。お姉様方に教えてもらった魔法は本当に恐ろしい魔法だと後々になってそう思い知らされた出来事でした。
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