報われなかった思い
二組の教室は、ザワザワしていた。
涙目の、香月君が教室を飛び出してきた。
「王ちゃん」
私の事を睨み付けた。
なに?
「知ってたの?姫ちゃん」
「えっ?何を?」
「これ」
卒業文集に提出する為に、二人で書いていた紙を何故要君が持ってるの?
「何それ?」
「知ってたんだよね?おうっちが、俺を好きだって。そんな気持ち悪い事、俺に思ってたって知ってたんだよね」
バシン…
私は、千葉君を平手で殴って、その紙を奪い取った。
私は、学校を飛び出した。
スマホを鳴らしても、香月君は出なかった。
私は、いつもの公園にやってきた。
「王ちゃん」
「しーちゃんだよね?」
「違うよ」
「本当に、違う?」
「違うよ、言わないよ。誰にも」
香月君が泣いていた。
私は、抱き締める。
「もう、学校に行きたくない。気持ち悪いって言われたから」
「誰に?」
「かなめんに…。気持ち悪いって言われたから。」
「これだけ、書き上げて。私が、渡すから先生に。卒業式は、行かないでいいよ」
私と香月君は、ありったけの気持ちを込めて書いた。
私は、そのまま先生に持って行った。
それから、私も香月君も学校には行かなかった。
卒業式の日は、私達は学校の近くで過ごした。
「明日から、ここに住まない?」
「いいの?」
「親には、もう頼んだし、仕事も見つけてきたから」
「わかった。」
私も香月君も、居場所なんてなかった。
だから、私達は自分達の居場所を自分で作った。
15年後ー
「まさか、結婚するって思わなかったよね、姫香」
「呼ばれるなんて、思わなかったよね。
「ああ」
突然、
私と香月君は、結婚式に来ていた。
結婚式が、終わると声をかけられた。
「おうっち、ごめんな。俺」
「今日来たのは、許す為じゃないから。俺が、来たのは千葉ともう二度と会わないから来たんだ。」
「ひーちゃん」
「じゃあね。」
「何で?」
「私、あの日聞いちゃったんだよ。
「それって、待てよ。亜美、姫ちゃんが、おうっちの文集の下書き、皆に見せびらかしたって。」
「要、今日そんな事言わなくたっていいじゃん。二次会行かないとねっ?」
「待ってよ、嘘ついたのか?」
「千葉達の話しどうでもいいよ。幸せになれよ。じゃあな。行くぞ、姫香」
「えっ、うん」
「姫ちゃん」
要君が、私の腕を掴んだ。
「俺ね、姫ちゃんが…」
「離せ」
何の話してるの?
香月君は、私の腕を掴んで歩き出した。
「あー。まだ、言いたりなかったな。姫香」
そう言って、香月君は私を引き寄せた。
「私なんか、まだ全然言い足りなかったよ」
「姫香、結婚しようか?」
「えっ?」
香月君は、私の指に指輪をはめた。
「何で?」
「これから先も、姫香と、一緒にいたいって思ったんだ。」
「私、男の人は好きじゃないよ」
「俺だって、女の人は好きじゃないよ」
そう言って、香月君は手を握った。
「ほら、5年前にお母さんのお墓に行っただろ?」
「うん」
「あの時にやって来た女の人が話した事覚えてる?」
「うん、覚えてる」
「高校生にあがってすぐ、姫香のお父さんに俺みたいな事があったって。」
「うん、言ってたね」
「お父さんは、姫香のお母さんに支えられたって。でも、忘れられなくて出ていったって。でも、姫香のお母さんは、うまくいってよかったって言ったって」
「うん、そうだね」
香月君は、自販機でミルクティーを買った。
「俺はね、これから先も
「私も、あんな風に言われたのに
「お互いに辛く、苦しい恋愛してるね」
「うん」
「それでも、俺の支えは姫香なんだ。わかる?」
「私もだよ。私の支えは、
そう言った私を抱き締めてきた。
「いろんな形がある。俺と姫香は、普通じゃないと思う。それでも、俺は姫香の傍にいたい。これから先も、支えていきたい。」
「私も同じだよ。
「結婚しよう。姫香の、両親みたいに…。」
「うん」
私も
でも、その愛は報われる事はなかった。
ただ、ただ、ただ、苦しい日々だった。
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