受入れるには視野を広げてみようと思います。

前略

断捨離と言って娘の漫画を売ったことあるお母様

娘は展開についていけてませんので空気でいようと思います。



★異世界にトリップしましたが、何の能力も無くて生きるだけで精一杯です!★



「わかった。

今日から君は鈍感野郎、無表情冷徹野郎に加えてデリカシー無し男と呼ぶ事にするよ」


課長の言い分にホワイトさんは【心外だ!!】と言いたげな表情をしている。


「凄いですね。

宰相にここまで言われているのに表情一つ変わらないなんて」


「…え?」


スミスさんの一言に驚いた。

確かに分かりづらいが多少なりとも表情違ったり雰囲気変わったりするのに。

言うほど表情変わらない訳ではないと思うが。


スミスさんとホワイトさんが話をしている間に考え込んでいると視線を感じた。

そう、課長がニヤニヤしながらこちらを見ている。


思わず殴りたくなるような顔だ。


これは何か発言すると課長に良いように捉えられてしまう。

ここは課長に退場願おう。


「あの、課長もスミスさんも仕事に戻らなくて良いんですか?」


私の発言にスミスさんは表情を変えた。

そう、まさしく般若だ!!


「宰相、お二人の様子は見れましたね?

では、帰りましょう」


「い、いやだ!

あんな仕事の山どうすればいいんだ!」


「大丈夫ですよ、宰相

山はあと2つ足せます。」


「何も大丈夫じゃないよ!!

書類に埋もれてしまうじゃないか!!」


「きっちりサポートして上げますのでご安心を!!


小近衛兵!宰相を職場まで運んで差し上げろ!!」


「御意」


スミスさんが声を上げると4人の兵隊の格好をした人が現れた。


嫌がる課長を4人で胴上げするように持ち上げた。

課長はジタバタして逃れようとしているがマッチ4人組にスレンダーイケオジは敵わないようだ。


「お二人とも、大変ご迷惑をお掛けしました。

この後のお祭りも楽しんでくださいね」


スミスさんは爽やかな笑顔でマッチョ兵を引き連れて去っていった。

課長も頑張っているが、マッチョの前では赤子も同然だ。


「宰相が迷惑かけるな。

毎度毎度、すまない」


ホワイトさんが呆れたように謝罪をしてきた。


「別に気にしてないですよ。

課長と話すの割と楽しいですし。」


ホワイトさんは少しホッとした表情をした。


「さて、お祭りの続き行きましょう!

私、美味しいもの食べたいです!!


今気になるのは、あそこの串焼きです。

何のお肉なんですかね?

良い匂いですね!」


ホワイトさんの手を掴んで串焼きに向かう。

力ではホワイトさんの方が勝るのに簡単に引けてしまう。


ホワイトさんを連れて串焼きに一直線!

食べるぞー!!


---------------------------


結局、食い倒れツアーの様にたくさん食べてしまった。


串焼きにリンゴ飴、特製チーズとハムが乗っている焼きたてバケットなどなど


音楽隊が音を奏でているのに合わせて広場の皆んなで踊ったりもした。


ダンスは出来ないが、お祭りでのダンスは型などないと言ってホワイトさんがエスコートしてくれた。


街の男女関係なく色んな人が曲の間エスコートしてくれて、体力の限界まで踊ってしまった。


そう、私は体力の限界を迎え噴水の縁に座り込んでいる。


「大丈夫か、タチバナ。

これを飲め。」


「ありがとうございます。」


息切れして項垂れている私にホワイトさんがコップを差し出してきた。


水かと思って飲んでみると甘い…


「あ、これ…

最初にホワイトさんがくれたリンゴジュースですね。」


「よく気づいたな。」


そう言ってホワイトさんもコップに口つけた。

あなた、またコーヒーですね?


「流石に覚えてますよ。

最初、ホワイトさんが飲んでるコーヒーの方が欲しいと思いました。」


「そうか」


ホワイトさんは口元を緩めた。

この噴水、最初にこの世界に来た時に座ってた噴水だ。


「…ありがとうございます。

お祭りに一緒に来てくれて。」


広場ではまだ皆んな踊っている。

体力あるなー。


「最初来た時は、絶望感を感じていました。

街の人も騎士の人も冷たくて、怖かったです。


正直、今日のお祭りもちょっぴり怖かったです。」


ホワイトさんの顔は見れない。

黙っているのをいいことに、私は勝手に語ることにした。


「また、冷たい目線を受けたらどうしようって思っていました。


でも、あの日声をかけてくれたホワイトさんと一緒なら行ってみようと思いました。


まさか、怖かった街の人たちとこんなに楽しく過ごせるなんて思いませんでした。」


ここは私の居場所じゃないと仕事先でも壁を作って過ごしていた。

仕事先のみんな、課長、ルゼルたん、スミスさん、ホワイトさん、ジョンソン、皆んな歩み寄ってくれていたのに。


「いつか帰るつもりです。

自分の世界に。


でも、帰るまでの間はこの世界の事をもっと知っていきたいと思います。」


冷たい目線を感じるのは日本でだって起こる。

何で怖がっていたのか、それは私が勝手にこの世界の住人じゃないと線引きしてしまったからだ。


「なら、俺はタチバナが元の世界に帰るまでサポートするまでだ。

この世界にはキレイな景色もたくさんある。


土産話にはちょうどいいだろう。」


「そうですね。

家族にびっくりさせてやります。」



拝啓

意識不明の父上


やっと、この世界を受け入れられそうです。

帰ったら異世界の話をたくさんして上げますね。


敬具

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