真剣な話の時は場所を考えた方がいいですよね
前略
いくらを食べすぎて鼻血を出したことがあるお兄様
人と出かけているのに存在を忘れました!
言わなければ気付きませんかね!?
★異世界にトリップしましたが、何の能力も無くて生きるだけで精一杯です!★
「正直、他の人のクオリティは知らないんだよ。
いつも、この精霊祭でしか披露してないからね。」
「では、いつもは何を?」
「魔導具を作って売っていますよ。
小さな店なんですがね。」
「魔導具作っているとなると、相当魔力が高いんですね。」
「いえいえ!魔力は人並み以下です。」
2人が話しているのをただただ聞いているだけになってしまった。
着いていけん。
「ホワイトさん、魔導具作るのに魔力高くないと出来ないんですか?」
私が質問すると2人は同タイミングでこちらを見た。
「そうだ。
作った道具に魔力を注ぎ込み、維持させる能力が必要だ。
魔力量、維持させる期間、これが多ければ多いほど良い魔導具だ。
しかし、この爺さんの今使っている魔導具は規格外の魔力量だ。」
「え、お爺さん凄いですね!!」
私がびっくりしてお爺さんを見ると、にっこり笑った。
「そんな事ないんですよ。
先ほども言ったように、私は人並み以下の魔力しかない。
私の魔導具には妖精の加護がついているんだよ。」
「妖精の加護だと!?」
お爺さんの言葉にホワイトさんが目を見開いた。
やはり、無表情キャラ消えたな。
お爺さんは自分の道具を鞄に片付け始めた。
店終いなようだ。
「お嬢さん、貴女がこの世界で決心をしたら私の工場に来てみてください。
きっと、悪いようにはならないよ。」
「今じゃないんですか?」
「今はその時ではないかな。
ただ、そう遠くないと私は思うよ。
時がきたら黄色いドアの魔導具店を探しなさい。」
「黄色なんて沢山ありますよ?」
「大丈夫、時がくれば自ずと分かるよ。
それでは、私は失礼するね。」
そう言って、お爺さんは帽子を被り去って言った。
不思議なお爺さんだった。
隣のホワイトさんを見ると、何か考えているようだった。
「妖精の加護って珍しいんですか?」
「ああ、相当妖精たちに好かれてないと加護を付与してもらえないからな。
全国探しても10人いるかいないかだろう。」
この世界の人口が分からんから、多いのか少ないのか判断し辛いが…多分少ない!!
「凄い人なんですね。」
「そうだな、タチバナが異世界人ってすぐに分かっていたようだし。」
「え、そうなんですか!?」
「この世界で決心したらと言っていただろう。」
「あ、確かに。」
普通言わないよな、この世界でなんて…
「タチバナ」
ホワイトさんが私の方を見ていた。
無表情な綺麗な顔、久しぶりに無表情な顔してんなー。
「お前の世界に帰る方法は城の者たちが探しているが今のところ進展はない。
今後もあるか分からない。」
まあ、ある程度覚悟してはいる。
ただ、ホワイトさんの言葉は帰りたいと思う私の心をずっしりと重くさせる。
「お前が帰れるように総力上げて取り掛かる。
だからタチバナ。
無理をするな。」
「無理…」
「今のお前は、この世界に馴染もうと頑張っているのがよく分かる。
休みの日もルゼルと勉強しているだろう。
それは凄い事だと思うが、お前の体も心も持たないだろう。」
「そんな事ないですよ。
前の世界だって休日返上で仕事してたくらいですよ!
大した事ないですって。」
私が笑って答えると、ホワイトさんは少し顔を顰めた。
私は心を痛めた。
ホワイトさんの後ろで課長とスミスさんが攻防を繰り広げてる方が気になってしまってホワイトさんの話所ではないことに。
何してんのあの人たち
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