いなくなった、四人

「警察に、連絡しなくちゃ」


「そうだね」


四人がいなくなった後、私は、みんなに声をかけた。


「待って、そんな事したら兄ちゃんが殺されないかな」


その言葉に、私達は固まった。


「本当だね」


「どこに、行ったのかな?」


「わかる?」


「わからない」


私達は、あの三人の事をちゃんと知っていなかった。


「真希さんの事は、知らないの?」


「わからない。興味がなかった。」


「いつから、付き合ってるの?」


「二年前」


「そっちは?」


「私も、慎吾の事をよく知らない。二年前に出会ったから」


「私も、春一と付き合ったのは二年前だった。」


香乂さんの、弟はその場に崩れ落ちた。


「大丈夫、絶対に助けるから」


私達、三人は彼等に連絡をかけるも出なかった。


何度も、かけても出ない。


「やっと、思い出しました。トミーは、兄ちゃんを気にいっていたんです。」


「慎吾がトミーですか?」


「はい、トミーは兄ちゃんの事を、人間が作り出したと思えないような造形美が見事だと褒めていました。僕もそう思います。同じ親から産まれたと思えないぐらい綺麗な人です。昔からずっと…。それは、年を重ねる程により魅力を増していきました。」


「慎吾は、その日から香乂さんが好きだったんですね。」


「多分、そうです。そう言えば、

ある時、トミーが兄ちゃんに何かを言ったんです。そしたら、兄ちゃんは酷く怒った。その思考は、人を殺すと怒鳴った。兄ちゃんの顔が、怒りに崩れた瞬間を初めて見たからよく覚えています。」


「でも、俺達って事は三人は来ていたって事?」


「それが、わからないんです。店に戻ってみましょう。」


大乂君に言われて、bar【囚われの住人】にやってきた。


「兄ちゃんは、ノートにお客さんの名前を書いているんです。トミーが、来ていたのは13年前です。」


大乂君は、棚を探してる。


「この辺りですね」


そう言って、ノートの束をもってきた。


私達は、トミーの名前を探した。


「あっ、あった。」


舘野さんが、そう言って覗く。


【〖トミー、ハリー、マーリー、三人組〗、リッキーさん、ユージーニ、マリー】


と書かれていた。


「このハリーとマーリーが、春一と真希まさきよね」


「ちょっと待ってください。兄ちゃんの日記も探します。」


そう言って、大乂君は同じ棚を探した。


「ありました。」


そのノートを開いた。


【私は、苛立ちを覚えた。トミーが、私の事を力でねじ伏せたいと話した。自分のものにならないなら、無理矢理すると言い出した。私は、トミーにその思考はいつか殺人をおかすと話した。】


【トミーは、同じ思考の持ち主だと言う二人を連れてきた。私を理解できるのは、三人だと話した。罪悪感はないのか?と聞くと、ないと答えた。私の事を理解など出来ないと話す。三人は、私を怒鳴り付けた。変態の思考の癖に、偉そうに説教するなと言われた。】


【トミーは、私を欲しいと言ってきた。まさか、トイレに一緒に入ってこられるとは予想外だった。私は、興味がないと話すとあの三人ならいいのかと怒りだした。どうするべきか、理解が出来ない】


「これって、トミーは、香乂さんが欲しかったって事ですよね?」


「兄ちゃんが出禁にしたから、花井さんにマッチを渡したんだ。」


大乂君は、ノートを見せた。


【トミー、ハリー、マーリーを私は、出入り禁止にした。三人の思考は、私とは全く異なるものだ。私は、これ以上この場所の人達を傷つけられたくなかった。】


「この事で、香乂さんに近づけなくなった。」


「それで、三人を殺したって事」


「そうなるね」


あまりにも、理不尽な理由に呆れてしまった。


ノートを見ながらも、何度も連絡するけれど出なかった。


「香乂さんが、帰ってきたら警察に言おう。」


「半年前から、同棲していてよかったよ」


「愛する人を殺した奴に抱かれていたなんて、最低だよ」


「並川さん、泣いちゃ駄目だよ」


「そうだよ」


私達は、悔しさと苛立ちと悲しみで、身体中がおかしくなりそうだった。

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