愛煙家の悲劇

羽弦トリス

第1話同窓会

W大学の同窓会がもようされた。久々にサークル仲間が集まった。

フリーライターの神谷は刑事になった久保田を見つけると、

「おいっ、ジジイ」

と、久保田に声を掛けた。振り向くと、学生時代より腹が出ている中年オヤジになった神谷の顔を見ると、「おぉー」と叫んだ。

「久保田君まだ、巡査部長なの?」

久保田は、人差し指を振りながら、「チッチッチッ」と言って「今は、警部補なのよ」

と、言う。

そこへ、がたいのいいヤツが現れた。

山下だ!

「おぉー山下、お前、今何の職業なんだ?」

山下は手にしたグラスの赤ワインをひとくち飲みながら、「少年野球の監督だよ」

「そう言えば、山下は元キャッチャーで甲子園経験者だからな」

山下はニコニコしていた。

すると、向こうで見た事のある面々がいた。

教師になった伊東、一級建築士の桜井、実家の洋菓子屋を継いだ佐々木たちであった。

6人全員集まるのは、大学を卒業後初めてだった。


久保田が言った。「タバコが吸いたい」

6人は会場であるホテルを出て、駐輪場の隅にあるショボい灰皿の筒が立っている所で喫煙した。全員、愛煙家である。桜井が言った。

「オレたち、喫煙者は非喫煙者より多く税金を納めているのに、何故こんなに嫌われるんだ?」

「そうそう、酒とタバコはニコイチじゃねぇか!」と神谷が言う。

「僕たち6人は何があっても、タバコは辞め無い事をここで誓おう」

佐々木の言葉に、全員が賛成した。

「だいたい、非喫煙者は軟弱なんだ。死ぬ原因はタバコだけではない!」

「健康促進法は違憲だ!」

などなど、酒の入った6人の愛煙家は嫌煙家を罵った。

そこで、山下が「喫煙可能の焼き鳥屋を知ってるんだ。皆で行かないか?」


いいねぇ~


5人は賛成した。

そして、彼らはこのホテルに唾を吐き焼き鳥屋へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る