第8話 霊写銃
オートマチック銃のような形状をした樹脂パーツは、バレルに相当する部分がまっすぐ円筒状にくりぬかれている。スライドはあるが、本体と一体化されている。マズルには小さめのレンズがねじ込むように固定され、スライドの途中にある治具のような突起の先端に、小さなストロボが取り付けられている。樹脂パーツのトリガー前部には大きな板状の空洞があり、そこにデジタルカメラの基板とmicroSDカードが収められている。
銃型樹脂パーツの取っ手部の内にはリチウムイオンバッテリーが収められ、そこからストロボと配線がつながっている。
開発チームの一人が、銃型パーツのハンマー部にあるスイッチをONにした。キュイーンと、ストロボ内のコンデンサーに蓄電される音が聞こえる。 霊写銃を持ったメンバーが、会議室に設置されたターゲットに向けて射撃の構えをとった。トリガーを引いた瞬間、ストロボから目が眩むほどの光りが部屋を照らした。目が慣れるころにはストロボの充電が開始され、霊写銃に取り付けられたLEDが緑色に点滅していた。
射撃したメンバーはmicroSDカードを取り出し、パソコンの前で構えているメンバーに渡す。十数秒後、ディスプレイにターゲットが映った画像が表示された。
その瞬間、開発チームが吠え、会議室は拍手に包まれた。
続いて開発チームは、連射性のテストを開始した。その後に写真のピント、画角等の他の検証を実施した。
検証が一通り終わった後、近くにいた呪術師が霊写銃の調子を尋ねた。パソコンの前にいた開発チームのメンバーは、基本的な動作は問題ないが、ピンぼけ等の細かな異常がある。でも実用面で言えば問題ない、と答えた。おお、と感嘆の声が上がる。後は実際に機能するのかが問題だ。
柿原は、再度隠れ里のメンバーを招集し、現在進めている各計画の進捗を共有した。次にメンバー間で次のアクションについて議論させた。
結果、霊写銃試作機の実践テストと、陣形の運用訓練、量産化の目途を立てることを目標とした。
その日の夜。隠れ里を代表して、一人の若手忍者が前線に加わった。戦闘開始直後、霊写銃を武士ゴーストに向かって放った。瞬時に伸びた放射状の光りが収まった後、武士ゴーストは跡形もなく消えていた。若手忍者は続けて数発撃った後、即座に戦線を離脱した。
隠れ里に戻り、撮影した武士ゴーストの数を調べたところ、一発当たり平均数十体のゴーストが映っていた。
霊写銃試作機の実践テストを成功させてから三日後。3度目の集会では、霊写銃の設計が完了したこと、陣形の運用も無事軌道に乗っていること、霊写銃の部品発注を完了したことが報告された。 量産した霊写銃を、多くの忍者が装備し、連携をとれば、今までの何十倍もの効率で武士ゴーストを撃退することができる。徳川ゴーストの撃退にも手が届く。
次の目標は、霊写銃の組み立て手順の確立と、忍者本部への霊写銃の普及およびレクチャーで満場一致だった。
平太、蛇蝎、乙女の3人は、霊写銃の普及およびレクチャーの許可を得るために、柿原に面会の手引きを依頼した。
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