Selfie Ninja 自撮り忍者
@mochiyuki
第1話 調査、そして発見
これは、伝統と向き合う物語である。
江戸時代、徳川家の元で活動していた忍者たち。時代の流れに従い、忍者の活動も息を潜めていた。
ところが、倒幕の恨みを抱えた徳川家の家臣の怨霊が、「徳川ゴースト」として現世に出没したという情報が忍者界隈で出回った。忍者たちは、過去に仕えた主君の怨念を鎮めることにした。
しかし、徳川ゴーストがいつどこに出現するかは予想できない。そこで、怨霊が人が集まりやすい所に引き寄せられることを利用し、若手忍者である平太、蛇蝎、乙女の三人は、人気スポットの現地調査を行うこととなった。
忍者本部から徳川ゴーストの発見報告があったスポットを調査する、若手忍者の平太、蛇蝎、乙女の3人は、大阪の道頓堀に来ていた。平太、乙女は、せっかくの自由時間や買い物の機会を、本当にいるかどうか怪しい存在を見つけるという任務に費やされてしまったことに不満をぶつけた。一方で、任務に忠実な蛇蝎は、他にやることがないから不満はないと言いながら、資料用の写真を撮り続けた。
道頓堀に続き、通天閣に来た若手忍者の3人。平太はおちゃらけながら写真を撮っている。乙女は平太の行動を成績の悪い忍者らしい行動だと指摘し、平太と口論になってしまった。すでに写真を撮り終わった蛇蝎は、周囲から目線を集めていると二人にいうと、二人は水を打ったように、粛々と撮影を続行した。
次の日。平太、蛇蝎、乙女の三人は、大阪城に来た。大阪城を見てはしゃぐ平太と蛇蝎。乙女は二人の姿に呆れながらも、久々にチームとして活動できたことをうれしく思いながら、スマートフォンを取り出した。資料としてではなく、単なる活動記録として、乙女は二人にポーズをとるよう指示するが、二人はそれに気づかずはしゃぎ続けた。しびれを切らした乙女が二人に注意した瞬間、スマートフォンのシャッター音が鳴った。
大阪での調査を一通り終え、平太、蛇蝎、乙女の3人は次の調査地である東京へ向かうために大阪駅に来ていた。徳川ゴーストに一度も遭遇していないので、平太と乙女は辟易していた。「でも、次は期待できる」とポジティブな言葉を発した蛇蝎に、二人は理由を尋ねた。すると蛇蝎はこう答えた。「東京は徳川幕府のあった場所だ。」
徳川ゴーストを見つけられるかもしれないと、期待に胸が膨らんだ若手忍者の三人。意気揚々と東京のレインボーブリッジへ向かった。
結局、徳川ゴーストは見つからなかった。理由を考察する蛇蝎の後ろで、平太と乙女は落ち込んでいた。理由は、道中の人々の視線に敏感になりすぎていたからである。二人は、蛇蝎になぜ平然としているのかと尋ねた。すると蛇蝎は、自分は忍者だから平気だと答えた。二人は何も言葉が出なかった。
東京にきて初めての夜に、若手忍者たちは彼らの先生から寛永寺を調べろという指令を受けた。寛永寺は徳川歴代将軍15人のうち6人が眠っているという、徳川幕府と密接に関わる寺院である。
いつも以上に気合を入れる平太、蛇蝎、乙女は、手分けして寛永寺を調べることにした。撮影後すぐ写真を確認したが、何も映らない写真ばかりだった。三人は落胆しつつ集合し、写真を整理していると、徳川家霊廟で撮った写真の中に、うっすらと徳川将軍の礼装が映っていることを確認した。
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