パーティを追い出されたけど魔王のお姉ちゃん達が使い魔になりました

夏川冬道

新パーティ結成編

パーティ追放時に貰った餞別のマジックアイテムから魔王のお姉ちゃんが登場しました

「アレックス、今日でお前とお別れだ」

 その冒険者パーティのリーダー、ユージンはアレックスにパーティ追放を告げた。

「ユージンさん、どうして僕をパーティーから追い出すんですか!?」

 アレックスはユージンの決定に不服で食ってかかった。

「お前は冒険者には向いてない……だから故郷に戻って新しい道を探してこい。これはアレックスの為を思っての決定だ……みんなアレックスの追放に賛成した」

 そう言うと、ユージンはパーティの仲間を見渡した。パーティの仲間は無言で頷いた。それは厳正な事実だった。

「うぅ……わかった。みんながそういうなら仕方ない。みんな今までありがとうございました」

 こうなるとアレックスもパーティ追放を受け入れるしかなかった。アレックスの瞳は涙で潤んでいた。

「これはオレたちからの餞別のマジックアイテムだ……これはお前の旅路に役に立つだろう。じゃあ、気を付けて帰れよ」

 ユージンから渡されたマジックアイテムを受け取るとそのままアレックスは冒険者ギルドから去っていった。


◆◆◆◆◆◆


「故郷に帰ると言っても今更もう戻れないよ……」

 宿屋の自分の部屋に戻ってきたアレックスはひとり呟いた。アレックスは遠く離れた故郷、エリンから家出してきた身の上で今更出戻りしても両親の手の者に捕まって実家に連れ戻されるだけだ。もう後に引けないのだ。なんとしてでも冒険者として成功しないと家出してきた意味は何もない。

 そこまで考えたところでアレックスはマジックアイテムのことを思い出した。そのマジックアイテムは奇妙な円盤状の物体のついた腕輪のようなものだった。その円盤上には紫、赤、緑、白、青、黒の色に塗られていた。とりあえず装着して円盤を回転させてみた。

 グルグルグルグル……。そしてその円盤は紫色の部分で停止した。次の瞬間、宿屋の床に魔法陣が出現し、そこから何者か出現した!

「一体何が起きたの……この魔法陣は何?」

 その何者かは赤い髪をした肉感的な美女でどこかヘレティックな雰囲気を纏っていた。アレックスは赤面した。

「彼方の地より古来からの契約に応じ魔王アスタロト、ただ今参上しました……」

 美しい魔王はアレックスを見るなり、唐突に沈黙した。

「ん?」

 アレックスは困惑した。アスタロトと名乗る女魔王が自分を見つめているのだ。魔王は時折この世界に召喚され混乱を巻き起こすものとされる。ひょっとしたら殺されるのではないかとアレックスは思った。だがしかし、アレックスの恐怖は予想外の方向に裏切られることになった。

「キ、キミってすごく可愛いね! 凄く私の好みのタイプ! マスター、あたしのことをお姉ちゃんと呼んでもいいよ!」

 そう言うと魔王アスタロトはアレックスを強くハグをした! アスタロトから放たれる熱と魔王特有の魔力の波動がアレックスの胸の鼓動をドキドキさせた!

「ウワーッ! 魔王から放たれる体温が!魔力の波動が!」

 そう叫ぶとアレックスは気絶した。14歳の少年にはヘレティックで肉感的な魔王のハグは刺激が強かったのだ。

「マスター!? 意識が飛んじゃった! ベッドに寝かせないと!」

 アスタロトは慌ててアレックスを介抱した。

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