第12話「Adult's Night」
残り10日。
俺は遺書を書いていた。
死ぬとわかっているのだから、書いておくべきだろう。
自殺でもないのに遺書があるのはおかしいかもしれないが、花夏さんに宛てたものだから、もはやただの手紙だ。
この間、病院で左足の腓骨の骨折が治ったということで、包帯などを取ってもらった。久しぶりに両足で歩いたので、最初はフラフラしていたが今はなんてことない。
台風が近づいてきたことを報道しているニュースを消して、ベッドにダイブする。
最近は花夏さんが痩せてきている気がする。顔色も良くないし……。
俺の家に来るときはいつも元気そうにしているが、それが演技であることはわかっている。彼氏になれば、分かる。
言及してほしくなさそうだから何も聞かないけど、心配だ。
もし、俺の死のせいでこうなっているのであれば、申し訳ない。
だから俺は言ったのに。背負わなくていいと。
家に来る回数も減ってる。
自分の無力さを思い知らされる。
結局、俺って花夏さんに何もしてやれなかったな。何かをもらってばかりだ。
俺なんかが彼氏にならないほうが、花夏さんも幸せだったんじゃないかな。
今からでも、どこかに逃げて彼女の前から消えることは可能である。
何度もこの考えが浮かんでくるが、実行できない。
もし、本当に彼女が僕のことを愛していたら可哀想だ。
とても自分勝手であることは分かっているから。
もう寝よう。いつまで考えても答えは出なそうだ。
あと9日
朝起きたら、家に花夏さんがいた。凛に会いきたのだろう。
僕はここでとても重要な提案をしてみた。
「花夏さん、き、きょ、今日。うちにと、泊まっていかない?」
噛みまくったもののなんとか言えた。
顔を真っ赤にしながら返事を待つ。僕らは恋人だ。
手も繋いだし、ハグもしたし、キスもした。だから、もう一歩先に行きたい。
花夏さんも僕の提案の意図がわかったらしく、顔を真っ赤にしている。
そして僕の耳元まで来てから言った。
「か、可愛いの着けてくるから、家で準備してくる」
何をとは言わない。恥ずかしがっている花夏さんも可愛い。
夜になるまでゲームをしたり、凛と遊んだり、ホラー映画を見ていたりした。
僕も花夏さんもビビりなので、ホラー映画は夜に見れない。
そして夜。僕は先にオフロに入って、ベッドの上で待っていた。
やばい、やばい!直前になって超緊張してきた。
経験がないからマジで分からない。頭を抱えていたら控えめな声が聞こえた。
「恥ずかしいから、あまりこっち見ないでね」
脳死画像。
後は想像に任せる。一応最後までやったということは報告しておこう。
やった。ヤッた?どっちでもいいか。もうこの話はやめよう。
ちなみに、進展があった。
僕は花夏さんのことを「ハナ」そして彼女は僕のことを「ジン」と呼び捨てで呼ぶようになった。嬉しい……。
こんな事があったので、僕は彼女の前から姿を消すのをやめた。
最後まで彼女と一緒に楽しい時間を過ごすことにした。
あと8日。
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