第11話「Fate/stay nightだったら、遠坂凛がいい」

あと40日。

俺は水族館で買ったマグロに手足がついたぬいぐるみを抱きながら、考えていた。

マグロって手足あったっけ?

違う、違う。

なぜ俺の家の前に段ボールがあった?

もう一度見に行ってみる。なんとも可愛らしい小さな顔が覗き見える。

そう、俺の家の前に捨て犬がいるのだ。

「なにかの縁だと思って育てるか。死ぬ前にいい事しておきたいしな」

犬種は柴犬のようだ。大人に成り立て、といったところか。

車に乗せて、動物病院に連れて行った。

ちなみに俺は右利きなのでなんとか運転ができる。

ちょっと怖いけど。

病気持ってるかもしれないし、健康じゃないかもしれない。


大丈夫だったらしい。

せっかくなのでペットショップに行き、ドッグフード、寝床やリード、首輪を買う。

家に帰るとこの犬がとても活発なことが分かった。

家に入るなり、キャンキャン言いながら駆け回っている。

前の家で少し指導を受けていたのか、排泄はトイレでするし少しの芸ならできる。

さて、名前はどうしよう。顔を撫で回しながら考える。

ムーコ?

ケルベロス?

定春?

ちなみにこいつはメスだ。

ケルベロスはないな。

「いてっ!」

甘噛された。突然の出来事だったゆえに驚いた。

こいつ、なんか凛としてるな。よしっ!

「お前、今日から『凛』な!」

「ワンッ!」

遠坂凛から取っただなんて分からないだろうな。

俺はセイバーも桜も好きだけど、やっぱり遠坂凛が1番好きなんだよな。

ツンデレってかわいいよね。


自分は適当に野菜を炒めて、凛には買ったばかりのドッグフードを皿に盛ってやる。

俺が死ぬなんて思ってもいないんだろうな。

何かを感じ取ったのか、俺の足に頭をスリスリしてくる。

俺もそれに答えるべく、撫で回してやる。こいつ、かわいいな。

そういえば、犬は足が臭い人によってくるって聞いたことがあるな。

俺の足、そんなに臭い?

こいつと一緒に入念に洗うか。


あと39日。

花夏さんが家に来た。そして固まった。

「何この犬!かわいい!飼い始めたの?名前は?」

胸に抱きながら言ってきた。

「僕の家の前に捨てられてた」

「カワイイでちゅねぇ。よしよし、ママが守ってあげるからね」

花夏さんが溢れる母性で犬を殺しそうだ。

でも、凛も満更でもなさそうだ。

いいなぁ、僕も胸に抱かれたい。いい匂いがしそう。

ヤバい。邪念を追い払う。

でも、気に入ってくれて良かった。

「そいつの名前は『凛』だ」

「ワンッ!」

「悪いんだけど、散歩お願いできる?」

「任せてっ!」

そのまま、花夏さんと凛は散歩に行ったまま3時間帰ってこなかったという。

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