外伝「シュナイダーの秘密(2)」
この間、新聞記事で見つけた文字が頭から離れない。
『行方不明の17歳の少年、惨殺死体で見つかる』
名前は書かれていなかった。きっと成人していないからだろう。
でも、これはシュナイダーだ。本人は殺されたと気づいていない様子だった。
これは言ったほうがいいのか。言えばあいつは成仏できそうだ……。
でも、もし知ってて言わなかったのだとしたら申し訳ない。
「あぁ〜〜〜!めんどくせぇ〜!」
自宅でこの間コピってきた資料をばらまいた。こういうのやってみたかったんだよ。
「やっぱり俺、CHICKENだな……」
シュナイダーって俺が呼んでないとき何してんだろ。
まぁいい。まずは散らかした資料を片付けなければ。
「ブワッっぁぁ!!?」
突然目の前にシュナイダーが現れた。
なんでこいつ。俺呼んでないはずだが。もしや、ちょっと考えてたからか。
いや、その前にこの資料を見られたらヤバい!
「おい、シュナイダー。その資料は見るんじゃないぞ。それはちょっと刺激が強い」
俺史上の最速で資料を回収していく。
でも、一枚がシュナイダーの足元に落ちていて回収できなかった。
シュナイダーは好奇心にかられて足元の資料を手に取る。
「や、やめとけ!」
シュナイダーの動きが止まった。息もしていないみたいだ。
死神はしないのかもしれないが……。
「なんで俺…泣いてるんだ……。覚えていないのに、心が反応している……」
そうだったのか。やはり、知らなかったのか。
残酷な真実であることは分かっている。
でも、遅かれ早かれこいつは知ることになっただろう。
『自分の死について』
「おい、小泉!これはなんだ!これは俺なのか?惨殺って……」
「……わからない。でも、その可能性が高い……」
怒られるのかと思った。なんで勝手に調べたのかって。
でも、シュナイダーの顔は優しい笑みを浮かべていた。
「そうか……。ありがとな。限られた時間の中で俺のことを調べてくれて」
衝撃の言葉だった。ありがとうだって⁉
こいつ……薄々気づいてたのか。
「俺は死んだ時の記憶がまったくない。他の死神は自身の死に方をよく笑い話にしてたけど、俺には何一つ思い出せなかった。だから、俺が担当したやつで調べてくれるやつを探してた。それがお前だった。だから、ありがとう」
「お前が記憶がないのって……」
「多分、相当ひどいことをやられたから、記憶障害になったのかもな」
自分が惨殺されたと聞いてもこんなに平然としてられるのはなぜだ?
こいつ、もう満足なのか?自分の死因がわかったから。
「それだけでいいのか?自分が何故死んだのかを知るだけでいいのか?」
「えっ?」
「俺はお前がいいのなら、お前の古い家に行くし、家族にも会わしたい」
そうだ。突然死んだから、親への感謝も伝えられなかっただろう。
家族に見えなくても、感謝の意を伝えることくらいはできるはずだ。
「いいのか……?」
「もちろんだ、お前は俺の死神だからな。成仏してもらわなきゃ胸糞悪い」
「もしかして、お前っていいやつ?」
「めっちゃいいやつの間違いだろ?」
「俺の担当がお前で良かったよ、小泉」
思わず笑みが溢れる。人に感謝されるなんていつぶりだろうか。
今日から俺には人間じゃない友人ができた。
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