120-3

2時間ほど注意事項や基本的な説明を聞いてから、ようやく実践に移る

ランプの形はそれぞれが自由に作ることになると、ああでもない、こうでもないと、意外と夢中になってしまう


「形にするのってやっぱり難しいのね」

中々イメージ通りの形にならない


「オリビエでもそうなら私なんて猶更よ」

カメリアはそう言いながら出来上がっていた部分の半分くらいを作り直し始めた


「それにしても面白い素材だな」

時間がたっても固くならない樹脂系の素材

お陰で何度も形を変えて作り直すことができる


「専用の薬品を塗って魔力を流すと固めることができるのよ」

「つまりそれまではいくらでも修正できるってこと?」

「そういうことよ」

リリーは大きく頷いた

それなら慣れていなくても充分作り上げることができる気がする


「これは魔力の一部を魔道具を作るための魔力に変換するのを助ける道具なの」

レキシーはそう言って1つの魔道具を取り出した


「一部だけを変換?」

「ええ。今まで使ってた魔法はそのまま使えるわ。そうね…魔力の一部をスキルに変える感じかしら」

「…スキルを使って魔道具に魔力を流すってことか?」

「そういうこと」

「…その魔道具は数がない?」

「ええ。この国では4つだけ」

「つまり今の魔道具師の数だけ?リリーは細工がメインだから…」

「そういうこと。これは弟子に引き継がれてきたものよ」

「だから自己流の魔道具師がいないってことか?」

魔術士が沢山いるのだから、そこから発展してもおかしくはない

でも実際問題、魔道具師は5人しかいないのだ


「危険性や禁忌の情報と共に受け継ぐための仕組みね」

「そう。それを理解した者や、側でサポートできる相手にしか使わない道具でもあるわ」

「元々少ない魔道具師に伝手のある者も少ないしな…そう考えれば携わって見たくても、手段がない者の方が多そうだ」

私達もキリアがいなければ出会う事さえなかった相手だ

それも偶々ランプを扱っていたからという偶然の積み重ねでもある


「魔道具教室をするなら、最初の内は今日説明した内容をさらに詳しく、幅広く説明して、理解できていると判断した者から魔道具でスキルに変換することになると思うわ」

「じゃぁそれまでは形成迄?」

「そうなるわね」

「それに教室と言っても一度に教えるのは2人が限度だと思うわ」

「どうして?」

「本当に理解しているか確認するためって言うのもだけど、一気に魔道具師が増えるのは…ね」

「あぁ…値崩れにもつながりそうだな」

ロキがぼそりと言った


「ええ。だから2人ずつ。独り立ちしたら入れ替わりで次の人って感じになるかしらね」

「オリビエたちは魔道具だけで売るってことは無いだろうから別枠ね」

「そうね…どちらかと言えば自分の為に作りたい感じかしら?」

「俺も!薬草を調合するための道具とか作りたいかな」

ブラシュが言う


「ふふ…だからあなた達は別枠ってこと」

「弟子とは別だからそこまで詳しい知識も必要ないだろうし、作業する時はレキシーが付き添うこともできるものね」

「だから子供達でも大丈夫ってことね?」

「ええ」

そんな話をしながら順番に魔道具を使って変換していく

終わってからステータスを確認すると“魔力注入”というスキルが増えていた


「すっごく分かりやすい名前のスキルね」

「ふふ…迷わずにすんでいいでしょう」

レキシーは笑いながら言う


「じゃぁ実際に流してみましょうか」

注意点を再び確認してから私たちは自分で形成したものに埋め込んだ魔石に魔力を流す


因みにこの時の魔力は生活魔法に付随するものでもいいらしい

ただし、属性魔法と違い力が弱いので小さな力しか持たない

同じ火の魔力を流しても、生活魔法の火はコンロの火をつける程度の力で、属性魔法の火は家を燃やし尽くす威力も可能ということだ


今回作ってるのはライトなので、生活魔法のライトを使って卓上を照らす程度の光をともすことができる魔道具が完成した


「これ、防空壕に非難した時とかによさそう」

ウーが言う

確かに防空壕のような場所では、ろうそくに火をともすより安全かもしれない


「俺は夜ベッドで本を読む時に使う」

そう言ったブラシュは今まではライトをずっとかけていたらしい

同じものを作っても使い道はそれぞれというのがまた楽しい

こうして私たちの魔道具作り体験は終了したけど、その後月に1回の頻度で作ってみることになった

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