116-2

「さて、開店まで1時間半、スイーツを並べましょう」

空気を切り替えるべく声を張り上げる

打ち合わせは何度もしてきたし、ある程度並べ方も決めてある

あとは手分けして並べるだけ

並べる場所は2か所

店内とテラスコーナーの片隅だ

席数はさほど多くないから随時追加するのを前提に1種類あたり5個ずつしか並べない

補充は随時頻繁に行うことにした

用意する数を揃えているから何が人気があったかは残ったもので判断することになる


使うお皿はハリーにお願いして作ってもらった

直径20cm程の正方形で5mmくらいの仕切りを残して9つに区切ってもらった特注品

ゼリーの様に水気のある物でも一緒に装える仕様にしてもらったのだ

1度に取れるのは9つまで、おかわりはお皿の交換制だ

そうすることで取りすぎて残される分を減らすこともできるし、お客さんが集中して並べてある品が一気になくなることも防ぐことができる


「ハリーは本当にすごいお皿を作ったわよね?」

「作ったって言うよりオリビエに作らされたって感じだけどな」

「それでもこうやって形に出来るのは凄いわ」

「オリビエ、ハリーにはどんな報酬を渡したの?」

みんなが興味深々でこっちを見て来た


「それなんだけどね…」

「ん?」

「ハリーに何がいいって聞いたら今日用意してるスイーツ全種類って答えが返ってきたわ」

「…スイーツ全種類?」

「私達6人とオリビエたちの全てってことよね?」

「でも全部一口サイズよ?」

「うん。だから全種類味わいたいんだって」

「そんなのでいいの?」

みんながその言葉に同感だとでもいう様な顔だ

私も正直そう思う


「面白いものを作らせてもらったからそれで充分だって言うのよね…」

「なるほどねぇ…」

「あ、じゃぁせめて全種類1つずつじゃなく2つずつにしましょうよ?」

カトリーヌの意見にみんなが賛成した

結局報酬は全種類を2つずつにするということでまとまった



そして開店時間

カフェオープン時の様にかなりの人が並んでいた

「中々の人数だな?」

「うん。何かちょっと懐かしい」

まだ1年半も経ってないのに随分前のように感じる


「あの頃よりこの家の人も増えたし、お客さんも顔なじみになったのよね」

「正直あの頃はここまでになるとは思ってなかったよ」

「そう?」

「ああ。それなりに客も入って続くんだろうとは思ってたけど、今ではこのカフェはこの町の中でもかなり有名になってるもんな」

「町だけじゃないわよ?カクテュスの中でも有名だってフェイが言ってたもの」

「カクテュスで?」

それは流石に驚くわよ?

町と国では規模が違いすぎるもの…

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