110-3
「技術指導と料理人を3国から5名ずつ出そう。今の環境と全く違うものになると精神的にもきつかろう」
「彼らには別の住居を魔術師団で用意させてもらう。食料も奴らには最低限の物だけだが別途用意すべきだな」
「技術指導も料理人も性的マイノリティの者がいるならその者を向かわせてはどうだ?」
「それはいいな。そのまま自分たちの住む町になるならやりがいもありましょう」
「見つからなくても理解のある者に任せた方がよさそうですな」
その後も様々な意見が出された
「新しい町の土台作りを行わせることで、しばらく働かせることが出来るがその後はどうすべきだろうか」
「亡命者の住まう場所の開拓に回せばよいのではないか?そこが整っても各国の僻地もたくさんあろう。死ぬまで開拓要員として下働きさせればいい」
「それはいいかもしれないな。当面テントで暮らしながら自ら開墾する必要もある。その手伝いに回すのは面白そうだ」
「これまで手足として使っていた者たちの下働きか」
「民たちのこれまでの不満も晴らせましょう」
誰一人として擁護する者はいない
それが称号持ちのしてきたことの結果だった
「逃走防止は既に処置済みです。民が傷付けられないよう反攻防止も施しましょう」
「心の中でどれだけ腹立たしく怒りをぶつけたくとも行動には移せない。さぞ屈辱的なことでしょう」
スキットはそう言いながらニヤリと笑う
「成人前の子供に関しては孤児院に回しても良いかもしれませんな」
「一旦見極めが必要ではないか?幼くても既に親と同様の思考の者も沢山いるだろうしな」
「確かに既に刷り込みが完了してる者もいるか…」
称号持ちの偏った考え方は子供のころからの刷り込みでできあがる
刷り込みの上で自我が完成していると既に遅いのだ
孤児院に入れてしまえばそこで屋敷にいたときと同じ振る舞いをする可能性もある
「ある意味被害者と言えるだけに…」
「では矯正施設を作るのはどうだ?」
「矯正施設?」
「称号持ちの考え方を捨てさせるための施設だ。その中で自給自足の生活をさせて教育を行う。更生されたと判断された者だけ孤児院に移す」
「念のため命令禁止を施した方が良いな。命令しようとした時点で施設に戻せるなら孤児院側も安心できるだろう」
「そのまま成人になってしまったらどうする?」
「その場合は施設から出し親同様生涯下働きをしてもらうしかないだろうな」
「それが妥当か」
「では新しい町と少し離れた場所に矯正施設を作りましょう。その運営も3国の共有で問題ないでしょう」
「孤児院へは3国へ順に送れば変な偏りもなさそうですな」
「開拓に関しては家族は分散させましょう」
「その辺りはまだ先の話になるでしょうからおいおい決めていくと言うことでよろしいか?」
「ああ、構わない」
「我々もそれでいい」
レンヌの言葉に他の2国も頷く
「これまで散々民を蔑ろにして来た結果だ。その身でしっかり受け止めてもらわねばな」
その言葉には皆同意する
これまで何度もソンシティヴュに苦言を呈してきただけに庇う思いは一切生まれない
称号なしの亡命者を無条件で受け入れたのはその辺りも影響していた
「これで大方決まったか」
「あとは王族の処遇ですな」
「その前に昼食にしましょう。広間にバイキングを用意しているので休憩がてら楽しんでもらいたい」
モーヴが言うと大きなため息がそこら中から聞こえた
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