97-2

「オリビエ」

「呼ばれてるみたいだから行くね。楽しんでくださいね」

そう言ってからロキと共に声のした方に向かう


「エイブ呼んだ?」

「おう。このタレなんだが…」

「肉を付けるやつ?」

「ああ。このタレ雑貨コーナーで売ってくれ」

何と…


「そんなに気に入ったの?」

「これは上手い。偏食のラピスが気に入ってるみたいでな」

子供達の方を見るとラピスは何かをほおばったところのようだ


「あの子が自分から野菜を食べるなんて驚いてるのよ」

リアナがしみじみと言う


「これあんまり日持ちしないのよね。だから売るのはちょっと…」

でも子供の野菜嫌いや偏食はほっとけないか

私はメモを取り出しレシピを書いてリアナに渡す


「そのタレのレシピ」

「まぁいいの?」

「どうぞ。ラピスが楽しそうに食べてるの見てたら…ね?」

「ふふ…ありがとう」

リアナの笑顔に私も嬉しくなった


「クロキュス聞いてくれ」

「何だよフロックス?」

「フェイに女性騎士を紹介してもらえることになった」

「良かったじゃねぇか」

「だろ?でな、オリビエに頼みなんだけどさ」

私に頼み?

話の繋がりが見えず首を傾げる


「今度6人で飲みたいんだ」

「なるほど?メンツはフェイとカプシーヌ、フロックスとダビアに女性騎士2人って感じ?」

「その通りだ。飯は屋台で済ませるから酒の肴を作って欲しいのと場所を借りたい。勿論金は払う」

フロックスは申し訳なさそうにしながら頼んで来た


「それくらい大丈夫よ?ただ…」

「ただ?」

「何人分用意すればいいかが分からないんだけど?6人って言っても一般人の6人とは違うわよね?」

「あぁ、そうだな…10人分は最低でもいるな」

「お前とダビアがいて10人前で足りるわけないだろうが。オリビエ、15人分用意してやってくれ」

ロキがフロックスの頭を叩きながら言う

珍しくロキが協力的だ


「わかった。じゃぁ報酬は今度迷宮の食材か調味料をお願いするってことでもいい?」

「勿論だ」

即答だった


「日が決ったら知らせて?できれば2日前くらいには教えてくれると助かる」

「場所はカフェの前でいいんじゃないか?時期的に外の方が気持ちいいだろ」

「ああ、充分だ。フェイと相談して日が決ったら伝えるよ」

フロックスはそう言ってダビアと共にフェイを捕まえに行った


「ロキがこういうのに協力的なの珍しくない?」

「前に約束したからな」

「約束?」

「最後まで情報を流してもらった礼だな」

「あぁ」

引き際を見極めていたものの、想定外の事が起きて身動きが取れなくなったせいだろう

婚姻式のパーティーで3国を敵に回すなど想定できるはずがないのだから


「そういうことなら張り切って作らないとね」

「…ほどほどでいいよ。お前が張り切ったら俺との時間が減る」

「ロキ…?」

普段人前では言わない言葉に驚いた

まさか…

そう思ってロキの顔を見上げると少し目が座っていた


「ちょっとダビア!」

「何?」

「さっきロキに何飲ませたの?」

「さっき?」

「特別な酒だって言って何か渡してたでしょ?」

「あぁ、70度の酒だな」

サラッと答えたダビアに唖然とする


「何かあったか?」

「何かも何も…ロキが酔ってる」

ロキと出会ってから1年以上経つ

でもどれだけ飲んでも酔った姿を見たことは無かった


「まじ?流石に強すぎたか?」

ダビアが駆け寄ってきた


「そういやクロキュスが強い酒飲んでたのは騎士団にいた頃か…まずったな」

「なになに、酔ったら何かあんの?」

シュロが割り込んで来た


「抱き付かれる。そんで朝まで逃げられない」

「は?」

「俺も1回やられた。いい年して抱き枕の気分を味わうとは思わなかったけど…」

マロニエが苦笑する

抱き枕って…“物”よね?


「…オリビエ、後は頼んだ」

「え…」

すでに背後から抱きしめられている


「片付けは引き受ける。先に部屋に戻った方がいい」

ダビアとマロニエが腰が引けたようにそう促してくる

そう言いたくなる何かがあるのだろうことは分かるけど…

少しの間悩んで結局、私はロキを促して先に戻ることにした


そして部屋に戻った途端、マロニエの言った通り朝まで完全たる抱き枕と化した

2度目は無いと願いたい…

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