88-4
3人が連れてこられたのは騎士が訓練している場所のようだった
「ここは…」
自分たちに向けられる鋭い視線に背筋が冷える
「説明は後だ。今はこの部屋で待機」
3人を部屋に通し騎士は出て行った
それから少し時間を置きながら2~3人ずつ騎士が同じ部屋に通される
不安からそれぞれに情報を交換するもわかったことと言えば、王の御前を通ってきたことと、いつからか記憶があいまいになっていたということのみだった
「さて、君達で最後だ」
2人を通した男がそう言いながら魔術師と一緒に部屋の中に入った
不安そうにしている騎士達を見回してから男が口を開いた
「俺はソルト、ここの騎士団長で、隣にいるのが魔術師団長のスキットだ」
その自己紹介に部屋に連れてこられた騎士はざわついた
「ここにいる20名はオナグルにより主従契約を結ばれていた」
「主従契約…?」
「まさか、だから記憶が…?」
「そう言うことだ。オナグルに魔封じを掛けたために解除されたんだろう」
スキットは答えるように言った
「主従契約は強力な魔術だ。ここにいる者が自らの意思を持ち続けるのは不可能だったと思われる。しかし、だからと言って無罪放免というわけにはいかん」
「…」
「守るべき者を傷つけた…それは消すことのできない事実だ」
「俺はどう償えば…?」
「守るために騎士になったというのに…!」
戸惑いと後悔、悔しさ、怒り…
様々な感情が見て取れた
「君達の家には既に賠償金の支払い命令が出ている。君たち自身にはこの国で魔物を狩るという罰が与えられた」
「魔物を…?」
「この国では増えすぎないよう、定期的に魔物狩りを行っている。その狩りに同行してもらう。課せられたノルマは100匹、倒した数は最初に聞き取りを行った際に作ったカードで自動で記録される」
「100匹なんて1日では…」
「魔物狩りは週に1度行っている。君たちはここの騎士団の宿舎で寝泊まりし、騎士と共に過ごしてもらう」
「魔物狩りのない日は訓練や町の巡回も行う」
「ノルマを達成したらどうなるのでしょうか?」
そう尋ねたのはシルバーの騎士だった
「それは達成した時点で伝える。ただし、4か月以内に完了しない者に関してはその時点で鉱山送りになると思え」
「4か月で20回の機会がある。単純計算で1回あたり5匹だ。率先して狩ろうとしなければ達成できない数でもあるがな」
「…」
一様に黙り込む騎士たちを前に、ソルトとスキットは顔を見合わせた
見込み無と判断された者は国に返されると決まっているし、5匹と言っても他者と協力したものもカウントされる
でもその情報はあえて伏せた
国に帰りたくないだろうことがわかっているからだ
「君達にはこれから一人ずつ我々のグループに入ってもらう。操られていたとはいえ騎士として許されないことをした者に対する風当たりは、決して優しいものではないだろう」
ソルトの言葉に数人が拳を握りしめた
まともな扱いをされないだろうことも予想できる
同じ騎士だからこそ逆の立場になった騎士の心中は嫌と言う程わかるのだろう
20人はそれぞれのグループリーダーに託された
各グループにはリーダーの他に騎士が8名、魔術師が1名いる
ソンシティヴュの騎士は敵意を持った視線で監視されるような感覚を持った
心を閉ざす者、反抗心を出す者、萎縮して精神を病む者がいる中、真摯に受け止め償うために必死で動く者もいた
その全てをカクテュスの騎士団が品定めするかのように観察する日々が始まった
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