88-2
「管財人を抱きこむならその費用は各家から追加で没収だ。王族の拘束はどうなっている?」
「城に残る王族は例の正妃のみです。正妃は城の牢に入れました。ゴールド4家は暗部が見張っていますのでいつでも取り押さえることが出来ます」
「相変わらず徹底してるな?」
聞いていないが気になっていることを先に報告されたモーヴはニヤリと笑う
「おほめにあずかり光栄です。ただ、城にいた使用人も牢に入れましたが少し気になる者が」
「申せ」
「称号なしのメイドが2名、オナグルの私室に繋がれておりました」
「つながれていた?称号なしはクロキュスの計画で皆城を出たと思っていたが?」
以前起こした感染症事件で称号なしには全て逃げる手段があったはず
実際かなりの者が城から逃げ出したという報告は既に受けている
「女性騎士に話を聞かせたところ、身寄りもなくオナグルに手籠めにされていたことで、例の計画の際も行くあてがなく残ったのだと。今回オナグルが出発する直前に枷を嵌めて逃げられないように繋がれたようです」
「今はどうしている?」
「女性騎士に面倒を見させています。彼女曰く…そういった女性が安心して暮らせる場所があればと」
そういった女性
それはメイドのようなケースの他に、盗賊に襲われたり、夫を亡くした者なども含まれる
処女説を重視する世界故の被害者といったところだろう
「そういう町を設けてもいいのかもしれないな」
「そういう町、ですか?」
「傷付いた女性と彼女たちに寄り添う覚悟のある男性の住む町だな」
「確かにうちの若いのにも数名、自分たちは娼館に行くのに、女性だけに処女説を押し付けるのはおかしいという者がいますね」
もっともな意見に反論できなかったという
「それに事故などで傷を負った女性も肩身の狭い思いをしていると聞きます。この国は国民性故多少傷があろうと気にしない者の方が多いでしょうが階級の高い貴族の中では…」
カクテュスでは貴族階級が4つ存在している
王族に次ぐ権威を持つ特級が3家、その下に上級が2家ずつで6家、さらに下に中級が3家ずつで18家、そのさらに下に下級が3家ずつで54家、といったピラミッド型で管理されている
「誰にでも幸せになる権利がある。そういう意味では新しい考え方も必要なのかもしれない」
モーヴはオリビエに話を聞いてみたいと思った
少なくとも歌姫の事を嫌悪した様子は無かった
だとしたら彼女たちの元の世界はこことは違う考え方だったことも充分に考えられるのだから
「当主とナルシスの件はもう少し考えるとしよう。騎士を連れ出す際は数人ずつ、ナルシスの牢の前を通って行け」
自分以外の者が少しずつ牢からいなくなる
それをナルシスはどう思うのか
その反応を楽しもうとしてる自身の仕える王を前に、スキットは絶対に怒らせないようにしようと改めて心に誓った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます