77.判明した行方
77
「…ロキ?」
明け方隣で動く気配がしたのに気付き目を開ける
「悪い。起こしたか?」
「ん…大丈夫。シャドウ?」
「ああ。モーヴから手紙らしい」
そう言うロキの手には手紙があった
ベッドに腰かけるとそのまま手紙を開く
「…歌姫が例の町に到着したらしい」
「本当に?」
「ああ。領主からマアグリの王に連絡が入ったそうだ」
3国の情報共有はきっちりされているらしい
「無事ならよかった。その町は受け入れてくれたのよね?」
「ああ。空いてる家があったからそこに住むらしい。自ら住人になりたいと言ってきて驚いたとか」
「そりゃあ驚くでしょ。この世界の慣習からしたら余計に」
この世界でなくてもイモーテルのようなタイプは特殊と言えるだろう
少なくとも私はイモーテル以外に知らない
「領主がゆっくり話を聞いた内容も少し書いてる」
「どんなこと?」
「ソンシティヴュを出てからあの町に着くまで馬車を数十回乗り換えて、その全ての商人と体の関係を持ったらしい」
「数十…無理」
想像しただけで吐き気がする
「しかもその全ての商人に服や装飾品を最低でも1つ買わせたらしいぞ」
「…それって可能なの?」
「普通なら無理だと思うんだけどな」
ロキはため息交じりに言う
「それだけ体が良かったのかどうなのか…流石に沢山の商人がただ搾取されたとは思いたくない」
「そうよね。元々交渉には長けた人たちのはずだし。イモーテルらしいと言えばそう言えなくもないけど…」
「どういうことだ?」
「あの子、歌う以外に仕事してなかったのよ。なのに豪邸に住んで質のいい宝飾品を身に着けてたわ。同性からは嫌われるタイプだから一流の歌手にはなれなかったんだけどね」
「…確かに男受けはするかもしれないな。俺は無理だけど」
「え?」
付けたすように告げられた言葉に驚いた
「お前と真逆。それだけでわかるだろ?」
「ん?」
「…空気の読めないべたべたしてくる女は一緒に居たら吐き気がすんだよ」
吐き出すように言われた言葉に言葉を失った
「王の側近である以上いろんな場所に同席するだろ」
「そう、なんでしょうね?」
「そのたびに獲物を狙う様に見られてみろ」
「…ぞっとする?」
王を救った元騎士である側近
元ゴールドの称号を持った独身男性
おまけに見目もいい
独身女性からすれば格好の獲物だったのだろう
「そういうこと。寄生することしか考えてない女は願い下げだ」
うん。まさしくイモーテルね
「そういう女がいいという男もいるんだろうけど…俺もダビアもフロックスも無理だな」
「一緒に迷宮に行ける女の人がいいんだっけ?」
「ああ。マロニエだけがちょっと別。でも自立した女を好むのは変わんねぇか」
「そういうものなのね?」
「そういうこと」
ロキは手紙をしまい立ち上がった
「もう少し寝るか?」
「ううん。このまま起きる」
一方的に敵意を持たれていたからと言って、イモーテルが苦しめばいいと思っていたわけじゃない
付き合いが長い分、多少の情もあるのかもしれない
イモーテルにとって居心地のいい場所にたどり着けたのならそれでいいと思う
私もイモーテルも元の世界には戻れないのだから
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