73-2

暫く話をして時間を潰す

「最初に騎士が呼びに来たのは?」

「2時間ほどした頃だ。あれから2時間半、そろそろじゃないか?」

「なかなかいい場所に斑点が出てきたな」

フロックスは袖をまくって腕に出た斑点を見せた


「私はこっちだ。少しかゆみがあるのが何とも…」

「さすがにそこまで調整は無理だったな」

胸のあたりを服越しにこすりながら言うジルコットに苦笑で返す

そんな言葉を交わして10分ほどした時騎士が駆け込んできた


「お願いします」

急変したとは言わないその騎士に笑って返すと3人で騎士団に向かった

そしてカトリックを診断していた2人は、その場で自らの斑点に気付いたのを装い人払いした

「伝言は伝えた。このまま感染症と発表する。落ち着いたら変装して計画通りに」

「承知した」

カトリックは頷いた

それを確認して2人はマスクをしてカトリックの部屋を出た


「医局長!フロックス殿!団長は…」

詰め寄ろうとする騎士を遠ざける


「カトリックは今息を引き取った。そして残念ながら私達にも同じ症状がみられる」

「それって…」

称号持ちが後ずさる


「新種の感染症と判断した。今日討伐に出ていた者、その者との濃厚接触者はこの後部屋から出ないように」

「医局長!来てください!」

別の部屋から呼ばれ医局長は飛び込んでいく

それをきっかけに精鋭たちが次々と息を引き取ったと発表された

同時にその同室の騎士も白い斑点が現れたと伝えられると騎士団内は緊張に包まれた

フロックスはナルシスに手紙を書いた

そこには医局長と共に自らも感染したこと、その上で感染症と判断したこと、すぐに埋葬場所の解放と抗菌袋の配布、接触してない者の1か月以上の隔離を依頼する旨を記載した

称号持ちの騎士が奪い合うかのようにその手紙をナルシスの元に持って行った


ナルシスは自らが感染したくないと、すぐに隔離措置を開始した

夕方以降医局長やフロックス、騎士と関わったものは騎士団にて待機の指示を出す

そこにはそれ以外のものは立ち入らないようにという指示も出していた

カトリックの妹への伝言は必要なかったらしいと、のんきに話すフロックスにジルコットは笑って返す


「予想以上の動きをしてくれるものだな」

「隔離措置は逆にありがたい」

自らも騎士団に隔離された医局長と医師2名とフロックスはカトリックの部屋にいた

称号持ちはたとえ接触していてもしていないと言い張り王のいるエリアに避難していた

元々特権意識の高い称号持ちは称号なしとは関わろうとはしない

食堂も別になっている為ナルシスたちも疑いもしなかったらしい

つまり今騎士団にいる称号持ちはフロックスとカトリック、カトリックの妹だけだった

それが判明した時点で皆が協力しながら王宮を出る準備を着々と進めていた


「王が気づくころにはここには一人もいないだろうな。そうなってから追っても遅いだろう」

「ははは…奴らはフロックス殿が指示した1か月は出てこないでしょうからな」

「1か月で済めばいいがな」

自分可愛さに一体どれだけの期間、隔離措置を続けるのか

そう分かっていても皆少しでも早くこの国を去っていくだろう

すでに抗菌袋に人形を詰めて出て行く者も見受けられる

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