59-3

「食い終わったら住民登録して必要なものを揃えないとならない。どこかお勧めの店があれば教えてもらえるだろうか?」

「必要なものは先にギルドで見てから揃えたほうがいいわね。」

「?」

「今、不用品をみんなが持ち寄ってるのよ。そこにある物で欲しいものは自由に持って行っていいことになってるから」

「それはまた…」

「ちょうど騎士が大量に移ってきたからな。買うにしても店の品ぞろえもそこまで無くてな。それで誰かが言いだしたんだ。家に眠ってる使えるものを持ち寄ろうって」

「中々いいアイデアだな?」

「だろう?毎日物が入れ替わってるから見てるだけでも楽しめるぞ」

「俺も見に行くかなー」

オリゴンがボソッと言う


「じゃぁついでに案内役勤めて来りゃいい。台車があるから使ってくれ」

「それは助かる」

「ありがたい」

「ラピスはどうする?一緒に行く?」

「ん…ここにいてもいい?」

「勿論構わないわよ」

「それは迷惑じゃないのか?」

「大丈夫ですよ。引っ越し作業大変だけど子供は退屈でしょうし…」

「夕方俺が送っていきますよ」

マロニエが言う


「それは流石に…」

「丁度町に行くんでついでですよ」

「あら、デートかしら?」

「当たり」

カメリアの突っ込みにも動揺しないマロニエに何かつまらないと思っていると、横でロキが呆れたように笑っていた

もちろん気づかないふりをした


「ねぇオリビエ」

「?」

「このパン、生クリームとフルーツ挟んでもおいしそうなんだけど」

カメリアがボソっと呟いた


「…確かに。せっかくだしカメリアが作ってみない?」

「えー?」

「ローズたちと同じように売り上げの一部はカメリアの取り分にして置いてみるのはどう?」

提案してみると黙り込んでしまった


「ローズたちの契約は店の取り分は3割なの。カメリアの場合はここの機材や食材を使うとしてもう少し店の取り分が大きくなるけど」

「…私の取り分は2割で充分よ」

「それは少なすぎでしょ」

「ううん。教えてもらってる分本当ならお金払わなきゃならないもの」

「ん~じゃぁ3割で。これ以上は負けないわ」

本当はもっと渡したいけれどカメリアの頑固さも知っているだけにその辺りが限界だろう


「…わかったわ。じゃぁそれでお願い」

「決まりね。タグはカメリアが決めてくれていいから。スナックでも軽食でもOKよ」

わずかな金額とは言えカメリアが自らの意思で稼いだお金を手にいれるならそれに越したことはない

カメリアには報酬を上げるよりこっちの方がいいのかもしれない

ロキを見ると優しい眼差しが返ってきた

多分私の気持ちに気付いてくれているのだろうと思うと嬉しくなってくる


「遊んできてもいい?」

「ああ、いいぞ。マロニエ頼むな」

「了解」

コルザとロベリ、リラとラピスを連れてマロニエが出て行った


「俺らも行こうか」

「そうね。オリビエ本当にありがとう。ラピスをお願いね」

リアナが言う


「ええ。安心して片付けに専念してください」

「助かるよ」

「またいつでも来てくださいね」

「ああ、今度はちゃんと客として寄せてもらうよ」

エイブが豪快に笑いながら言った


「私達も同じ年代だからこうしてお話しできて良かったわ」

「本当よね。知らない土地でどうしようかと思ったけどちょっと安心したわ」

メリルとリアナはすっかり仲良くなったようで途中かなり盛り上がっていた


「1回みんな招待してバーベキューでもすればいんじゃねぇの?」

「クロキュスお前いいこと言うなぁ。騎士達がついたらそれも有だな。チビ達も喜ぶだろ」

ナハマは昨日初めてバーベキューを体験して気に入ったらしい


「なら庭を改造するかな」

「ジョンの腕の見せ所ね。楽しみにしてるわ」

「あぁ。任せろ」

「じゃぁ俺は案内がてら行ってくる。ブラシュはどうする?」

「俺は畑見てるよ」

「わかった。じゃぁ行こうか」

オリゴンの言葉に4人が台車と共に町に向かって行った


私達もそれぞれの仕事に戻ることにしたもののその日の夕方最後の1家族が到着したようだ

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