50-2
「私はマナによる攻撃も出来るから」
「マナ?」
「元の世界で出会った冒険者に教わったんだけどね、体の中を流れる魔力とは別の気を、描いた魔法陣にのせて使う技。それを思い出さなかったらリタイアするしかなかったかな」
「いや、こうなる前にリタイヤしろよ…」
半ば呆れたように言うロキに苦笑する
「…クリアしてカモミを安心させてあげたかったの」
「安心?カモミを?」
何でまた…とでも言いたげな顔をする
「うん。多分カモミが恐れたのは…狙われた私を庇ってロキの身に何かが起きることだと思うの。それなら力を全部使ってクリアして認めてもらおうと思って」
「…」
「でもどこかに油断があったのね。魔法が効かない魔物がいるだろうとは思ったけど、フロア全体が魔法が使えないなんて思わなかった。そんな思い込みをした私のおごりのせい」
「それは…」
「自分の身に起こったことを考えれば絶対は有り得ない。何があってもいいように備えるべきだってこと、思い出した。特に人間の理の通じない迷宮では余計にね」
「…」
ロキは無言のまま私を抱きしめる
「ロキ?」
「こんな思いは二度とごめんだ。もしお前に何かあればあいつらを皆殺しにしても足りない」
「それは…ごめん」
まさかそこまでとは思っていなかった
「もっと前に話そうとは思ってたんだけど…」
「もしそうだったとしてもだ。自分の目の届かないところで大切な人間を失うのは二度と…」
抱きしめる腕に力がこもる
家族を失ったロキだからこそ余計だったのかもしれない
「ごめんね…」
ロキを抱きしめ返してそう言うしか出来なかった
息が詰まった時浮かんだのはロキのことだけだった
私の中にロキを失うという選択肢は無い
見て見ぬふりをしてきたこの異常なステータスでも、ロキといるために役に立つのならすべて受け入れる
この世界に来てから初めて私はそう思っていた
「…大分顔色が戻ったな」
暫くしてからロキが言う
確かに独特の脱力感がかなりマシになっていた
「ロキに話したこと全部伝えても大丈夫だと思う?」
「ああ。召喚のことは俺が話そう」
「ん。ありがと」
降ってくる口づけに応えながら感謝を口にする
こんなわけわかんない話でもそのまま受け入れてくれることがありがたかった
「それにしても…お前が俺より強かったとか…」
「ふふ…でも戦いの時のセンスはロキの方が上だと思うよ?それにこの世界の知識は絶対に敵わないもの。何よりロキがいてくれるだけで安心する」
戦闘や迷宮においては特に、詳細に表示される鑑定でさえロキの知識や勘には敵わない
「お前らしいな…」
そう言いながら向けられる笑みは優しい
「少し眠れ。ここにいるから」
私の体を包み込むように抱きしめなおしながらロキは言う
優しいぬくもりに包まれて私の意識は遠のいていった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます