40-2

翌朝朝食が済むとみんながハイキングに出かけて行った

屋敷にいるのはロキと私だけだ

言うなら今だと深呼吸する


「ロキ」

「んー?」

「話があるの」

改めて言うと鼓動が一気に早くなる

緊張と不安が入り混じって吐き気すら覚えた

ロキはこんな思いを何度もしていたのだろうか…


「どうした?」

いつもと違う何かを悟ったのかロキはサロンに促してくれる

ソファに座るよう促されて身を預けるとロキはソファテーブルに腰かけてまっすぐ私を見ていた


「何があった?」

暫く続いた沈黙を破って出るのは心配を含んだ言葉

真っすぐ向けられるこの言葉を失いたくないと心から思った


「…すき…なの」

「え…?」

戸惑った表情にもう遅すぎたのかと胸が痛くなる


「いつの間にか、ロキに惹かれてたの…ロキと一緒にいたい…」

言いながら涙が溢れてくる


「…本気…か?」

「ん」

念を押すような問いかけに頷くと突然抱き寄せられた

早い鼓動が伝わってくる

抱きしめるその手は少し震えていた


「大事にする」

震える声で短くささやかれた言葉に胸に顔を埋めるようにして頷いた


「オリビエ」

初めて聞く優しい声音だった

導かれるように顔をあげると唇に柔らかいものが触れる

それがキスされたのだと気づいたときには再びついばむようなキスが落とされていた


「ろ…ぅん…」

膝の上に乗せられ深くなるキスに思考が奪われる


「ふ…」

解放されたとたん笑われる


「何で笑う…」

拗ねたように言うと頭を引き寄せられた


「この顔はほかの奴には見せられないな」

「!」

耳元で囁くように言われて肩が震える


「一つ聞いていいか?」

「なに?」

「お前元の世界で経験済み?」

「…そんな暇なかったから…」

首を横に振りながらそう答えるとホッとしているのが分かった


「経験してたら何かあるの?」

「この国では女性の婚姻前の性的な交わりはタブーなんだよ。誤魔化しても契約の時にバレる」

「あ…そういえば歌姫は側妃も無理だろうって言ってたっけ…」

「ああ。それ以外にも王族としての色んなことが吸収できるかって問題もあるけど」

ため息交じりの言葉にその辺りも全てダメなのだろうことは分かる


「オリビエ、出来るだけ早く婚姻の契約をしよう」

「…ロキ?」

「早くオリビエの全てを俺のものにしたい。出来ることなら今すぐにでも…」

再び抱きしめられて涙が溢れてくる

心が喜んでるのが分かる


「私も…早くロキのものになりたい」

そうつぶやいてしまった瞬間息を飲む音がした

そして自分の発した言葉に自分が一番驚いた


「必死で抑えてんのに煽んな…」

「ごめ…」

ため息交じりの言葉に謝るしかできない

経験は無くても多少の知識はある


「教会で魔力を用いた契約…だよね?」

「ああ。教会に申請して受理されたら1週間公示される。その間にその教区の2/3以上が納得する反論が出なければ許可が下りる。その後司祭の前で契約が完了すれば婚姻が認められる」

「…教会、いく?」

「俺はいつでも受け入れる覚悟はしてきたけどお前は違うだろ?今さら焦らなくてもいいよ」

「違うの…私がロキを他の人に取られたくない」

「は?」

ロキが何言ってんだとでも言うように体を離す


「結構前からロキへの気持ちは自覚してたの…」

「え?」

「でもロキもはっきりした言葉は言わなくなったから、そう言う気持ちはもうなくなっちゃったのかなって…そう思ったら今の関係壊すことになるかもしれない言葉は怖くて」

「じゃぁなんで?」

今は伝えようと思ったのか

少し困惑したような顔を向けてきた

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